プロボクシングWBA世界バンタム級王者の堤聖也(29=角海老宝石)が、同年代の旧知の友に引導を渡す。引退を撤回して挑戦する元WBC世界フライ級王者比嘉大吾(29=志成)との初防衛戦(24日、東京・有明アリーナ)を控えた14日、都内で練習を公開し、自らの拳で高校時代からの友人のボクシング人生に終止符を打つ決意を口にした。
練習前の会見で堤はあえて非情な言葉を使った。「比嘉大吾の最後の試合だと思っている」「あの局面の人間はこれでボクシング終わりでしょう」。数奇な運命で巡ってきた友人対決。勝負に徹するために、強い表現で“情”を心の中に閉じ込めた。
同じ95年生まれの比嘉とは高校時代からライバル関係を超えた友人。高校卒業後に一足先にプロに転向して世界王者に駆け上がった比嘉について「僕が(大学生の)アマの時に世界チャンピオン。刺激をもらえる存在だった」と堤。20年10月のプロ初対決(引き分け)後も定期的に食事をともにするなど、よき友人関係はずっと続いていた。
昨年10月に堤が世界王座を奪取した直後にも一緒に昼食をとった。そこで比嘉から「引退する」と告げられただけに、初防衛戦の相手が比嘉と聞いて驚いたという。「彼が勢いよく上がっていった時も、どん底も見ているし、話も聞いた。応援したい気持ちはもちろんあるけど、今回はまったく別」と、12月の発表会見以降は連絡を絶った。
この日の公開練習では映画「ロッキー」で主演のシルベスタ・スタローンが練習で身に着けていたのと同じ灰色のスエットと、黒いコンバースのシューズを着用した。「ロッキー感を出すならこのスタイルと思って。(刺激を受けたのは)勝負にかけるメンタル」。比嘉も同じ映画を見ていると聞くと「いい刺激になっていると思います」と、思わず硬い表情が緩んだ。
初防衛戦を「自分がチャンピオンとして価値を上げていく試合」と位置付けている。「ベルトを守ろうとか、迎え撃つという気持ちで臨んだらやられると思う。守るのが目標じゃない。サイクロンのようなボクシングを見せたい。比嘉大吾に勝って、強い選手とやりたい」。友人に引導をわたす試合は、さらに上を目指す堤にとってもボクシング人生をかけた重要な一戦になる。【首藤正徳】

