秋場所3日目から、前相撲が始まった。
前相撲は新弟子検査に合格した力士が取り、勝ち抜けた順に次の場所の番付が決まる。
同時に、ケガなどで番付外に降下した力士も前相撲を取る。今回、その1人が大野城(30=高田川)だ。同じく番付外の城皓貴(20=武蔵川)を寄り切って勝った。
「やっと帰ってこれました。これまでの場所中は、みんなの相撲を見て、ちゃんこ番をやって…。戻ってこれて、うれしいですね」
本場所は5場所ぶり。支度部屋の光景、におい、音…。日常的だったはずの場所を五感で懐かしんだ。
ちょうど2年前、自己最高位の東幕下22枚目だった。
だが、昨年夏場所から3場所連続で全休。番付は下がり、同年九州場所は序ノ口で復帰したが、今年の初場所から4場所連続で全休。番付外となり、10カ月ぶりに本土俵に立った。
かねて首を痛めていた。椎間板ヘルニアと診断されていた。
「右手がしびれて、力が入らなかった。手術を受けて、力が入るようにしたかったんです」
今年1月30日に手術を受けた。10日間で退院したが、次の日に緊急入院した。感染症を起こし、最高42度の発熱が約2週間続いた。寝たきりのまま、1カ月も入院した。
手術では、背中側の首にメスを入れた。そのため、後頭部の下部の髪を剃った。背骨に沿うように約20センチの手術跡が残った。
「ヘルニア自体は良くなっていないんです。骨を削って、神経を移動させている。本当はもう1回、こっち(首の顔側)から手術をしなきゃいけないんですけど、そうすると復帰まで1年以上かかるんで、相撲が取れなくなる」
まずは右手のしびれを取って、相撲を続けることを決めた。
今回、医師からゴーサインが出て復帰に至ったが「次、何かあった時は下半身不随になるかもしれない」とも言われている。
それでも相撲を続けるのはなぜか。
「手術を受けて良くなるなら、手術を受けていいんじゃないかと、相撲を取ることを前提に親方が考えてくれています。やめる選択肢はない。戻って、番付を戻すことで恩返ししたい」
師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)は病院に付き添ってくれて、一緒に医師と話をしてくれたという。
最高70キロあった右の握力は、一時38キロまで落ちていた。手術後、65キロまで戻ってきた。
稽古は1日10番と決めている。無理はしない。本来は、胸で当たってまわしを取る四つ相撲だったが、立ち合いで手を出していく取り口に挑戦している。
「ちょっとずつ覚えて、首も鍛えて、今までの相撲がちょっとずつできるようになりたい」
11月の九州場所は、福岡県大野城市出身の大野城にとってご当所になる。【佐々木一郎】


