西前頭4枚目の栃ノ心(27=春日野)が初金星を獲得した。横綱日馬富士(30)をはたき込み。06年春場所の初土俵から10年目で、初めて横綱を倒した。右膝の大けがで1年前は幕下下位。そこからはい上がってきた元三役が、師匠から譲り受けた紺色の締め込みで殊勲を手に入れた。

 ひときわ大きなサポーター。その右膝に力を込めた。立ち合いで当たると、横綱が左に動いてきた。幾人もの力士が負けたパターン。だが、栃ノ心は違った。膝を使って踏ん張った。振り向いて強烈な突きと押し。そして、頭が下がった日馬富士をはたき込んだ。25度目の横綱戦で初めて味わう金星の味。「最初に勝った大関戦(09年秋)と今日の相撲が、10年間相撲をやってきて一番うれしい」。どちらも日馬富士だった。

 元小結。だが、1年前は幕下55枚目にいた。13年名古屋場所で右膝前十字靱帯(じんたい)と内側側副靱帯を断裂。2度の手術を行い、復帰したばかりだった。歩くこともできない、味気ない入院生活。当時を今も忘れられない。「ちゃんこの味が恋しかったよ」。

 入院中は163キロの体重が150キロまで減った。戻るとまず、ちゃんこを無心に頬張った。「おいしかった」。相撲が、部屋が好きだとあらためて実感した。食べすぎて177キロまで増えた体重は、砂浜をひたすら歩き、キャベツやリンゴだけの食生活で戻した。つくり直した鋼の体。強度は、以前よりも増した。

 紺色の締め込みには「栃乃和歌」。春日野親方(元関脇栃乃和歌)から贈られ、11年5月の技量審査場所からつけている。1度だけ外したときが13年名古屋場所だった。以来、手放せない。「ボロボロだけど、使えるまで使う」。アカデミー賞主演男優賞俳優ニコラス・ケイジ(51)に似ていると評判。「それは嫌じゃない」と笑う。結びの一番で初めて最後まで土俵に残った。スポットライトを一身に浴びた。【今村健人】

 ◆栃ノ心剛(とちのしん・つよし)本名・レバニ・ゴルガゼ。1987年10月13日、グルジア・ムツケタ市生まれ。06年春場所初土俵、08年初場所新十両、同夏場所新入幕。小結を4場所務めるが、13年名古屋場所5日目に右膝靱帯を断裂し、3場所連続全休。14年春場所での幕下復帰から4場所連続優勝で幕内復帰。得意は右四つ、上手投げ。192センチ、167キロ。家族は両親と弟。血液型AB。