安倍晋三首相は28日、新型コロナウイルス感染拡大阻止に向けて27日に発表した全国への休校要請方針について、最終的判断を各地方自治体に「丸投げ」する考えを示した。

最終的判断は自治体や学校法人にゆだねられるためだが、結論ありきで対応を迫られた教育現場では、混乱や不安が広がっている。

   ◇   ◇   ◇

安倍首相が突如表明した全国一斉休校要請は、一夜明けるや、自治体への「丸投げ」に変貌。国民の不安や社会の混乱はさらに拡大した。

首相はこの日、衆院予算委で判断に至った証拠は何かと切り込まれたが、正面から答えなかった。聞かれたことに誠実に答えない、「桜を見る会」をめぐる答弁と同じだが、今回は「桜」のような個人的問題ではなく、国民全員がかかわる問題だ。

対応次第で多くの国民生活に混乱を招きかねない政治判断だからこそ、周到に準備し、判断の理由やもたらす影響を隠さず、具体的に説明すべき問題だ。

まず急ぐのは政治判断ではなく、国民の不安を払拭(ふっしょく)することのはずだ。そもそも今回の対応で感染拡大を阻止できるか、説明はいまだにない。29日に会見で説明するというが、タイミングがずれている。

首相は26日、会議で決めた内容について「いちいち外に発表しない」「そういうパフォーマンスは意味がない」と話した。

密室の動きを国民は知るすべもないが、国民が知りたい情報の発信をパフォーマンスと言う感覚には驚いた。ゆがんだ「官邸主導」と言わざるを得ない。「国民の命と健康を守る責任がある」と首相は語るが、政治決断を優先して国民を振り回すなら、トップの資質が問われても仕方ないのではないか。【政治担当・中山知子】