東京・池袋の都道で19年に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の第7回公判(下津健司裁判長)が27日、東京地裁で開かれた。この日は、飯塚被告の被告人質問が行われた。

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公判後、被害者参加制度を使って裁判に参加した、松永拓也さん(34)と真菜さんの父上原義教さん(63)が会見を開いた。松永さんは「加害者が自分の意思を初めて語る場になった。むなしさと悔しさ…加害者の人間性が、よく出ていたんではないかと。全て記憶に基づいて話されていた。ただ私は、やはりドライブレコーダーの映像が、いわゆる事実だと思う。見たという自転車をバイクに変遷したが、ドラレコには自転車もバイクも映っていなく懸け離れている。加害者が持っている記憶と事実が違うのは1つ、2つではない。たくさんの事実の懸け離れがある」と、怒りを通り越して、むなしさを吐露した。

その上で「『アクセルペダルが床に張り付いている』『足がどこに置いている』と自分の裁判に大事なところは覚えている。悔しいですし、何故だろうと…私には理解できない」と言い放った。そして「パニックになったと言っているが、アクセルペダルを目視したとか、冷静なんだなと。たった20メートルの距離しかないので1秒ない世界…それでも自分は見たんだという考えを変えられない。私には加害者の考えは理解できないことが多すぎる。次回は私が質問しますが今日、聞いてむなしさが増した。今日、一番、絶望を感じた。悲しいとか苦しいとか、超越して呆れた。あまりにひどい」と吐露した。

高橋正人弁護士は「一瞬のことなので、詳しく記憶されていないのは、やむを得ないが…驚いたのは、弁護人にドライブレコーダーを見せられたのに、記憶が修正されない。車線変更を3回したのに、1回しかしていないと、いまだに考えの修正が効かないのが理解できない」とあきれ果てた。その上で「(自身の車の)前に自転車がいたから車線変更したというが、左にいたのはバイクだったと言うが、ドライブレコーダーは全然違う。左に車線変更したら、前に何もいなくて2回(被害者に)ぶつかった。全然違う。この人には何を言ってもダメ…1回、思い込んだらダメ。信用性があるかと言ったらゼロ」と突き放した。上谷さくら弁護士も「彼が謝る最後のチャンス…せめて『悪かった』と被害者の前で謝って欲しかった」も語った。

松永さんは「2人を返して欲しい」とおえつを漏らした。そして「主張する権利はあるのは分かるが、簡単にご冥福を祈るとか言わないで欲しい。(謝罪は)裁判が終わり、全てを受け入れた後で言い。無罪主張は罪がないと言っているのと同じ」と突き放した。

6月21日の第8回公判では、松永さんら被害者参加制度を使って裁判に参加した被害者が質問する。松永さんは「法廷という逃げられない場で、私たちの思いを受け止めて欲しい…どう思うかは、あの人なので…」と語った。【村上幸将】