東京・池袋の都道で19年に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故の遺族・松永拓也さん(35)が20日、都内で開催中のTBSドキュメンタリー映画祭で上映された映画「池袋母子死亡事故『約束』から3年」(守田哲監督)舞台あいさつに登壇した。観客とともに映画を見た松永さんは、目に涙を浮かべながら「2人の棺、遺体と対面した時、命を絶とうか迷った。2人の命を無駄にしない、現実を知ってもらい、1つでも事故を減らす活動をすると思って生きてきた。被害者にも加害者にも、その家族にもならない社会につながれば」と訴えた。

自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪に問われ禁錮5年(求刑禁錮7年)の実刑判決を受けた、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三元受刑者は(90)は収監されているが、15日には民事裁判が行われた。松永さんは「刑事裁判ではブレーキの踏み間違えかどうか、車の不具合が争点だった。民事裁判では(飯塚受刑者の)体の状態のことも争点になってきている」と説明した。その上で「加害者を追い詰めるとか、そういう意味ではなく、民事裁判で体の不具合が認められれば…好きでなっているわけではないですが、体の不具合がある方々が、どういうシステムで事故を防いでいけるかという議論に繋がって欲しい」と語った。

TBS社会部の記者として、松永さんと事故を3年にわたって取材してきた守田哲監督も「私が強調したいのは、民事裁判で飯塚さんの事故直前の、体の状態のカルテが明らかにされた。飯塚さんは収監されましたが、民事裁判の論点は、まさに運転すべきだったかどうかというところが科学的、医学的に議論されようとしている。極めて重要なこと」と力を込めた。その上で「運転する、しない…医師とのコミュニケーション含め、全ての高齢者に関わってくる話として、今回の事故、裁判を考えていただきたい」と続けた。

松永さんはツイッターで「金や反響目当てで闘っているようにしか見えませんでしたね」「お荷物の子ども」などと誹謗(ひぼう)中傷されたことを受け、12日に警視庁に相談。警視庁が侮辱容疑で捜査を始め、16日には被害届を受理している。その件について、守田監督は「侮辱の問題は今、警察が捜査を始めましたが、松永さんは、この3年間、もっとひどいメッセージを受けています。本当に深く傷ついた…そのことも明らかにしていきたい」と語った。

松永さんは舞台あいさつの最後に「非常に重い話だったと思う。自分自身、見ていても記憶がよみがえって、つらかった。当事者でない方も、心も体も非常にダメージを負っていると思うので、少しリフレッシュしていただければ。来ていただいて、耳を傾けていただいて感謝しております。ありがとうございます」と観客に呼びかけた。そして3年間、取材を続けてきた守田監督と、舞台あいさつを取材に来たメディアに対しても「この3年間、一生懸命、身を粉にして取材してくださった守田さんをはじめ、多くの方々に感謝申し上げたいと思います。ありがとうございます」と感謝の言葉を述べた。

松永さんは舞台あいさつ後、日刊スポーツの取材に応じ、誹謗(ひぼう)中傷の件について言及。「真菜と莉子を『お荷物』と、もののような言い方をされた。愛した人を侮辱され、すごく苦しかった。でも誹謗(ひぼう)中傷の連鎖は避けたい」と語った。【村上幸将】