安倍晋三元首相(当時67歳)が参院選の街頭演説中に奈良市で銃撃されて死亡した事件は、8日で発生から1年。殺人罪などで起訴された山上徹也被告(42)の父親の兄で元弁護士の伯父が日刊スポーツの取材に応じ、山上被告へ事件の公判前手続きには出席しないように説得する手紙を送っていたことを明かした。大阪拘置所での近況についても語った。

「徹也へ-」。大阪拘置所に勾留されている山上被告へ、伯父が手紙を送ったのは、奈良地裁での不審物騒ぎの後だった。

「公判前整理手続きは国民の中から選ばれた裁判員に法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)が、かみくだいて、分かりやすくする手続き。素人の徹也が出席して、どうする。自らの主義や主張をする場ではない」。元弁護士の立場から被告の出席は弁護する側には「迷惑だ」とはっきりと伝え、注意した。

山上被告が出席して行われる予定だった6月12日の第1回公判前整理手続きは、地裁に届いた不審物騒ぎで中止になった。不審物騒ぎを知り、伯父はすぐに手紙を送った。

忠告を聞き入れた山上被告は「自分が出席することで騒ぎが起きたということもある。次回はよく考えてみたい」と弁護団へ伝えたという。伯父は「徹也は手紙の内容を理解し、納得したのだと思う」と話した。

疑問もある。「なぜ徹也が手続きに出席することになっていたのか」。訴訟法を勉強しているという情報も漏れ伝わってきている。山上被告が受刑や出所した場合のサポート体制を作ることに専念し、見通しが立つまで面会するつもりはなかったが、「おかしなことが多い。どこまでが本人の意思なのか」と面会を決意した。

山上被告のもとには全国から現金や、衣服、お菓子などの差し入れが絶えず、伯父は「出所後に勉学のために使ってほしいという現金が最も多い」。大阪拘置所では、新聞や雑誌を丹念に読み込み、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に関する記事にも目を通している。

関係者によると、初公判は来年以降にズレ込む見通しだという。【松浦隆司】