将棋の第54期新人王戦決勝3番勝負の第3局が10月31日、大阪市の関西将棋会館で行われ、10月1日付でプロ入りした上野裕寿(ひろとし)四段(20)が113手で現役最年少棋士の藤本渚四段(18)を下し、3番勝負を2勝1敗として「新人王」に輝いた。
上野はデビュー年、プロ3戦目で棋戦初優勝を果たす快挙を達成。プロ入りわずか31日目の棋戦Vに「優勝という1つの結果を出すことができたのでよかった」と喜びを語った。
戦型は先手の上野が矢倉、藤本は雁木(がんぎ)に組んだ。難解な中盤戦を経て、両者とも持ち時間3時間を使い切り、1分将棋に突入。最終盤では「ダメかな…。負けも覚悟した局面もあった」。最後は激戦を大逆転し、勝利をたぐり寄せた。
兵庫県加古川市出身の上野と香川県高松市出身の藤本は井上慶太九段門下。先にプロ入りを決めたのは藤本だが、上野が兄弟子にあたる。新人王戦の同門対決は42年ぶりだった。上野は三段枠で出場した新人王戦で、現在、竜王戦7番勝負で藤井聡太竜王に挑戦している伊藤匠七段ら実力者を破り決勝に進出した。
藤井が新人王を獲得したのは、デビュー2年目の111戦目。新人王では“藤井超え”となった。新人王優勝者はタイトル保持者との非公式の記念対局が恒例となっている。タイトル保持者が複数の場合、新人王の希望などを聞いて調整するが、今回は8冠を独占する「藤井一択」。「藤井先生と戦うのは難しいことなので、有意義な時間にするために準備をしたい」。若き8冠王への「挑戦」に胸を高鳴らせた。
師匠の井上は熱狂的な阪神ファンだが、上野も幼い時から猛虎党。「一打で流れを変えることができる」と佐藤輝明内野手のファンだ。「新人王」が将棋界の日本一を目指す。【松浦隆司】
◆新人王戦 若手プロ棋士や奨励会三段らが対象。六段以下のプロ棋士や三段、女流棋士らが参加する8大タイトルとは別の一般棋戦の1つ。新人王戦の歴代優勝者には羽生善治九段、森内俊之九段、佐藤天彦九段、藤井聡太8冠らが名を連ね、トップ棋士への登竜門として知られる。

