4月24日刊行予定の書籍「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房、神田裕子著)をめぐり、この本が、職場の「困った人」について「ASD」や「ADHD」など発達障害の症状名でタイプ分けし、人物を動物の絵で表現しているのは差別につながるなどの批判が、ネット上で次々とあがっている。
この問題を受け、三笠書房は18日付で、HPでコメントを発表。「本書籍に対するご批判等賛否の意見が本書籍の発行前に生じておりますが、まずは事前告知の限られた情報の中で、ご不快な思いをされた方がいらっしゃった事実について、お詫び申し上げます」と謝罪した。
その上で、三笠書房は書籍の趣旨として「困った人」と「関わり合いになることを避けることでトラブルの発生を回避しようとする傾向」を批判する観点から、「どのように受け止め、どのような姿勢で臨めばトラブルの発生を回避しつつ、当人と上手に付き合うことができるかという点を基本的な視点として、この問題を論じております」と釈明。「本書籍をお読みいただくことによってご理解いただけるものと信じております」としており、今後、刊行する意向とみられる。
ただ、三笠書房は「収録されている『簡易版診断チャート』は、直ちに障害や病気という医療上の診断に繫がるものではないことは言うまでもなく、あくまでも相手を理解するための『目安』に過ぎません」とも説明している。
もし、この書籍が、医学的な裏付けなどのないまま、他者について、単なる印象から「ASD」や「ADHD」という症状名を使用してタイプ分けしたり、「困った人」というマイナス評価の代名詞として、「ASD」や「ADHD」の症状名を使用しているのであるならば、差別の助長につながる可能性がある。
また、三笠書房は18日公開の文書で著者神田裕子氏の見解も掲載。三笠書房が公表した文書によると、神田氏は「私自身も含めて、家族に発達障害の特性傾向が見受けられます。あくまでも自己判断ではありますが、他人事とはとらえられないと感じています。そのため、差別意識や偏見などはまったくありません」としている。「困った人」を動物として描いた表現についても「差別的な意図」を否定しつつ「ご不快な気持ちになった方々がいることは事実であり、表現方法について、もう少し慎重に検討を重ねるべきであった」となどと記している。
日刊スポーツは三笠書房に17日に、この書籍の出版の是非をめぐる見解などを質問する取材の文書を送っているが、これまでに返答はない。
この書籍をめぐっては、発達障害の当事者らで作る任意団体「発達障害当事者協会」(東京都新宿区)が19日までに、発達障害のある人を「困った人」とし、擬人化した動物のイラストを添えた書籍は「発達障害への誤った理解と偏見に基づくステレオタイプを強化する」として「三笠書房刊行予定書籍に関する質問状の送付について」との文書を公表。「発達障害者の尊厳を傷つける表現が含まれているとして、正式に質問状を提出いたしました」としている。
同協会は、公開した文書内で、この本が発達障害のある人を「『困った人』として一括りに扱い、さらに目次では具体的に『【タイプ1 ASD】 Case 6 異臭を放ってもおかまいなし』『【タイプ2 ADHD】 Case 10 同僚の手柄を平気で横取り』などと記載」していると説明。さらに「表紙デザインにおいては、ビジネスパーソンの中に擬人化された動物が描かれており、文脈から発達障害者を『言葉が通じない動物のようなもの』として表現していると解釈せざるを得ない内容」と批判している。
同協会は取材に対し「発達障害のある人に対する差別を助長するような書籍を刊行する三笠書房のコンプライアンスを問いたい」としている。
書籍をめぐっては、Amazonなどには予約受け付け中の書影が掲載されている。書籍の説明の中には、「あなたの周りの『困ったさん』はどのタイプ?」とするイラストが掲載されており、タイプ1には「ASD」と書かれ、ナマケモノとみられる動物、タイプ2には「ADHD」と書かれ、チンパンジーとみられる動物が描かれていた。
このイラストを担当したイラストレーター芦野公平氏は16日にSNSを通じて「ご不快な思いをされた方がいらっしゃること、それ自体が大きな問題であり、表現に関わった一人として深くお詫び申し上げます」と謝罪。さらに18日に、三笠書房の公開した文書を受け、再びXで「イラストレーターとしてではなく、私個人という人間として差別をしました。それは『差別意識の有無』とは関係のないことです」とし「本当に申し訳ありませんでした」と改めて謝罪。さらに、19日にも、指示を受けて人物を動物に描き直した経緯はあっても「仮に職業上は責が無いと言い渡されても、人生に於いて個人としての責は免れないとの思いの謝罪です。今回お声を拝読し自分を省み、想像力を失った時人は意図せずいつでも差別をし得ると実感し、その意味に於いて終始差別的な在り方であったと反省し綴りました」としている。
三笠書房ホームページのの書籍紹介のページでは、Amazonや紀伊国屋書店などの大手書店などの販売サイトのリンクが張られている。しかし、19日現在、紀伊國屋書店やヨドバシカメラなどの販売サイトでは、「予約受付を終了しました」「在庫なし」などの表示が出る状態になっている。予約受付が在庫数に達したのか、なんらかの理由で予約受付を中止しているのか、刊行前のためにこのような表示なのか、は不明。

