JR東日本秋田支社の「TOYOSHIMA FARM(トヨシマ・ファーム) モニターツアー」に参加した。
鳥海山のふもと、秋田県由利本荘市は矢島地区でワインの製造を手がける同ファームは、昨年10月にワイナリーも開業した。新たな観光資源として注目される。また、鳥海・矢島地区の魅力度アップとJR羽越線の利用促進を図る、秋田支社の伴走型地域づくりの一環として企画されたツアーの目玉にもなる。
秋田といえば「高清水」「両関」「No.6」「鳥海山」「雪の茅舎」「爛漫」「飛良泉」など、スラスラと銘酒が出るほどの日本酒どころ。灘の生一本で有名な兵庫県、伏見のある京都府、水と米が豊富な新潟県、荒川水系と利根川水系を抱える埼玉県に次いで、全国の都道府県で5番目の生産量を誇る。そんな場所でワインって? 素朴な疑問から足が向いた。
トヨシマ・ファームは、南東に遠く鳥海山を望む標高220メートル、454メートルの地点に各1ヘクタールのブドウ畑を有している。ブドウといえば、藤棚のような木から垂れ下がるように実がなるというイメージが強い。ここではフランスのブドウ畑を思わせるかのように、緩やかな斜面に整然枝葉が連なった「垣根仕立て」になっている。厳冬期には2メートル近い積雪のあるこの地域に合わせた手法でもある。
豊島昂生(こうせい)代表(35)は地元の高校を卒業後、東京の大学に進学。大阪で就職した後にAターンし、稲作農家の父親を手伝った。当時は減反政策真っただ中だった米作りは選ばず、2016年(平28)にワイン用ぶどうの栽培を志した。2~3年前にはぶどうを全滅させたこともある。当初は隣接する山形県の西川町にあるワイナリーに委託して販売はしていた。「自分でワイナリーを」と思いから場所を探していたところ、矢島地区に地元農協の資材センター跡地を借りられた。昨年10月に念願の開業となった。
こちらで製造されるワインは赤、白など5アイテム。豊島代表によると、今季のぶどうの出来はまずまずで、合計約6000本を製造するという。酸味を生かしたフレッシュな果実味があり、飲みやすい。日本海で水揚げされた海産物や、秋田の豊かな水と土地で育った野菜と合う食中酒だ。
全国には山梨・勝沼、長野・塩尻、北海道・十勝、山形・高畠など、屈指のワインどころが点在する。「当初は肩を並べられるよう、追いつき追い越せでやろうと肩に力を入れて頑張っていました。日照時間が長くて雨が少ないこれらの場所とは製造方法が違うと気づきました。追いかける必要もない。肩の力を抜いて、冷涼な風をうまく生かした独自のワインができればと方向転換しました」(豊島代表)。
製造、販売だけではなく、地域の食材や、羽後本荘と矢島を結ぶ「由利高原鉄道」とコラボしての観光振興にも貢献したいという夢がある。今回のモニターツアーでは実際に「由利高原鉄道」のワイン列車にも乗り込み、そんな将来について語っていた。
JR東日本秋田支社が9月20日に企画した一般販売向けのモニターツアーはあまりにも人気が高く、すでに完売した。同社では、「来年もツアーを催行する予定」としている。

