世界1位の貫禄Vだ。単勝1・3倍のイクイノックス(牡4、木村)が逆境を覆してG1・4連勝を果たした。

発馬でつまずいて1コーナーではほぼ最後方。4コーナーでも物見して外へふくれたが、首差でねじ伏せて現役最強の力を示した。慣れない栗東調整に戸惑いながら初の関西遠征も克服。秋はジャパンC(G1、芝2400メートル、11月26日=東京)を大目標にする。

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逆境でこそ輝くのがヒーローだ。ゲートが開いた次の瞬間。大本命イクイノックスが揺らいだ。鈍色の曇天の下で、漆黒の馬体が右へ傾く。痛恨のつまずきだ。視界は馬群に遮られ、1コーナーではほぼ最後方へ。この日の芝内回り過去2鞍はともに逃げ切り。さすがの名手も想定外だった。

「イメージでは中団で乗って向正面からポジションを上げたかった。1歩目は良かったけどつまずいた」

まくり気味に押し上げた4コーナーでも誤算が続く。「大外で物見した」。さらに外へふくれるロス。先頭とは5馬身以上-。そんな絶体絶命の窮地から、青鹿毛に大流星のスターホースが躍動した。湿気と熱気が渦巻く大歓声を背に受け、みるみる先頭へ。首差で大逆転を完遂させた。両手を挙げて引き揚げてきたルメール騎手は、顔を赤く上気させて愛馬をたたえた。

「むちゃくちゃ強い。宝塚記念は難しいレース。一番強い馬でも勝つのは難しい。世界一の馬に乗ってもプレッシャーはあった」

“アウェー”での調整にも苦労した。初の関西遠征克服へ、選んだのが3週間の栗東滞在。堂々たる見た目と違って繊細だからだ。当初は慣れない環境に萎縮して、僚馬と隊列を組んでも先頭を歩けなかった。木村師によると、ようやく本来の姿を取り戻したのは前週末。「体調も上がって、自信を持って歩けるようになった」。もし栗東入りが1週間遅かったら…。周到な準備が実を結んだ。

困難を乗り越えたからこそ、その強さが際立った。いわば、首差の圧勝だ。トレーナーも「ホッとしました。乱暴ですけど、レース内容はどうでもよかった。今日の勝ち方を見ても、歴史的名馬といって異論を唱える人はいないと思う」と感服した。秋の大目標はジャパンC。勝てばアーモンドアイや父キタサンブラックを超えて歴代賞金王となる。世界ランク1位の最強馬は、いよいよ未到の領域へ脚を踏み入れようとしている。【太田尚樹】

◆イクイノックス ▽父 キタサンブラック▽母 シャトーブランシュ(キングヘイロー)▽牡4▽馬主 シルクレーシング▽調教師 木村哲也(美浦)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 8戦6勝(うち海外1戦1勝)▽総収得賞金 14億8918万8100円(同4億5889万100円)▽主な勝ち鞍 21年東スポ杯2歳S(G2)、22年天皇賞・秋(G1)、有馬記念(G1)、23年ドバイシーマC(G1)▽馬名の由来 昼と夜の長さがほぼ等しくなる時