さぁ、かかってこい。ダート世界最強馬フォーエバーヤング(牡5、矢作)がBCクラシック(G1、ダート2000メートル、31日=キーンランド)に3年連続で参戦する。

おととしは3着、昨年は日本調教馬として初制覇。今年は史上2頭目の連覇がかかる。決戦を前に、サイバーエージェント会長の藤田晋オーナー(53)が日刊スポーツのインタビューに応じた。芝の凱旋門賞挑戦も選択肢にあった中、なぜ再びBCへ? 有馬記念参戦は? 引退後は? 胸中を語った。【取材・構成=桑原幹久】

威風堂々。ダートの本場米国の猛者たちに、日本のフォーエバーヤングが王者として立ちはだかる。藤田オーナーも新たな心境で愛馬を送り出す。

「昨年は同世代のシエラレオーネやフィアースネスといったライバルたちにどうしても勝ちたいという気持ちがありましたが、今年はもういません。能力は証明済みだと思うので、やはり迎え撃つ心境でしょうか」

昨年は日本競馬の歴史を塗り替えた。あの興奮は一生色あせない。

「未勝利戦であっても1勝は本当にうれしいですが、BCクラシックはさすがに格別でした。あれほど興奮するレースが、今後の馬主人生でもう一度経験できるのか、それが不安です」

唯一無二の景色に届き、馬主人生に彩りが増した。

「馬の評価はもちろん、馬主の私もフォーエバーヤングのおかげで、世界的に競馬の世界での名刺代わりになりました」

5歳の今年も現役を続行。春はサウジC連覇を果たしたが、昨年3着のドバイワールドCは2着に敗れた。

「サウジCの連覇は賞金の面でもうれしかったですね。ドバイワールドCは勝てなかったのがむしろ意外なほどでしたが、このレースは縁がないのかなと思って諦めます」

秋の大目標は2択に絞った。BCクラシック連覇か、未知の芝へ飛び込む凱旋門賞挑戦か。中東遠征後から矢作師と何度も意見を交わし熟慮した。

「未知数の凱旋門賞挑戦は、評価という意味では負けても傷は少ないかな、という気持ちも私にはありました。でも、やはり堂々と自分の土俵であるダート最高峰のレースで勝負することで、最終的に矢作先生と一致しました」

金看板が傷つくリスクを承知で、腹をくくった。

「BCクラシックを勝ち逃げしたい気持ちが馬主として全くなかったといえばうそになりますが、最近はそんな風に種牡馬価値が高まった時点で引退する馬が多いので、競馬ファンの1人として一石を投じたい気持ちもありました」

前回の船橋ではなく、秋初戦に米国G1のジョッキークラブゴールドCを選択。日本では珍しい4頭立てを制した。

「4頭立てだったせいか、G1を勝ったような感慨深さは湧かなかったです。前哨戦と位置付けていたからかもしれません。ソヴリンティというライバルが回避したから応援に力まなかったのかも。いずれにしても、本番に向けてはいい始動戦になったと思います」

昨年はJRA賞で年度代表馬など3冠を獲得。米国の年度代表表彰「エクリプス賞」でも最優秀古馬ダート牡馬を受賞したが、年度代表馬はソヴリンティに奪われた。今年は米国G12勝、さらに00、01年ティズナウ以来2頭目のBCクラシック連覇とくれば、リベンジ実現の可能性は極めて高いが、藤田オーナーは“まだ”冷静だ。

「私はその思いはさほど強くなかったのですが、矢作先生に言われて確かに勝ったら年度代表馬だな、と気付いたくらいです。私も表彰式に出席したら事の重大さの実感が湧きそうですね」

今年いっぱいでの引退が既定路線。「できる限り長くレースを見ていたい気持ちもあるのですが、無事に引退して種牡馬生活を送るために、5歳いっぱいは現実的なタイミングかと思います」。7月のセレクトセール時は有馬記念参戦の可能性を示唆したが、現時点では「まだ迷っています。BCクラシック後に矢作先生と相談して最終的な結論を出すことになると思います」とした。また引退後、種牡馬としてのけい養先は「ほぼ決まっている」とし、BCクラシック後に最終契約を結び、正式発表する見込みだ。

「もう何回かしかレースが見られないと思うと本当に寂しいです。自分の所有馬の中に、それほどの有力馬がまだ現れていないことにも不安を感じます。BCクラシックが楽しみですが、昨年とは違って、今年は無事に走り終えてほしいという気持ちが入り交じっています」

強く、健やかに。愛馬と駆け抜けた夢物語は、最終章を迎える。

◆藤田晋(ふじた・すすむ)1973年(昭48)5月16日、福井・鯖江市生まれ。青学大卒。98年に24歳で株式会社サイバーエージェントを設立。00年3月、東証マザーズに当時史上最年少の26歳で上場した。AbemaTV社長。子会社のCygamesが「ウマ娘 プリティーダービー」を開発、運営する。18年にJ1・FC町田ゼルビアのオーナーに就任。同年にプロ麻雀リーグ「Mリーグ」を発足させ、現在までチェアマンを務めている。21年に馬主資格を取得。22年ニュージーランドT(ジャングロ)でJRA重賞を初制覇。以降は毎年JRA重賞を勝ち現在6勝。