フライドチキンと言えば、日本ではケンタッキーフライドチキンを思い浮かべる人が多いと思いますが、ここアメリカでは南部発のファストフードチェーン「チックフィレイ(https://www.nikkansports.com/leisure/column/la/news/201908220000211.html)」と「ポパイズ・ルイジアナ・キッチン」が人気を二分しています。アメリカではフライドチキンは南部の黒人奴隷のソウルフードとして知られており、今でも南部では家庭料理として親しまれています。そんなフライドチキンを巡って、夏から全米で大騒動が起きています。

ポパイズ・ルイジアナ・キッチンは、スパイシーなフライドチキンが人気のチェーン店
ポパイズ・ルイジアナ・キッチンは、スパイシーなフライドチキンが人気のチェーン店

ことの発端は、ルイジアナ州ニューオリンズ発のフライドチキンを中心としたチェーン「ポパイズ・ルイジアナ・キッチン」が、8月に「過去30年で最高の新商品」と銘打ってフライドチキンをブリオッシュバンにサンドしたチキンサンドイッチを発売したこと。これに対して、同じく南部のジョージア州アトランタ発の「チックフィレイ」が、SNSで「自分たちが元祖のチキンサンド」と主張すると、今度はポパイズが「おいしいの?」と応戦する挑発的なツイートをしたことで、全米中のフライドチキンファンたちがポパイズに押しかける事態に発展したのです。その結果、わずか2週間でチキンサンドイッチが完売してしまい、購入できなかった客が店員に拳銃を向ける事件が起きたり、どこの店でも買えない状態が続いていることに激怒した客が訴訟を起こすまでの事態になってしまったのです。

ポパイズは苦肉の策として「Bring Your Own Bun(自分でバンを持ってきて)」の頭文字を取ったBYOBキャンペーンを実施し、チキンサンドを食べたい人は単品のフライドチキンを購入して自分で作ってと呼びかける動画を作成。これもネット上で、「自分でバンを持ってこいってどういうこと?」で大きな話題を集め、同店の人気はさらに急上昇しました。それから2カ月近くたった今も、ポパイズではチキンサンドイッチは売り切れが続いており、「近日中に発売を再開します」とホームページで告知していますが未だに食べることはできません。

ポパイズのホームページでは、「近日中に販売再開」と告知されています(ポパイズのホームページより)
ポパイズのホームページでは、「近日中に販売再開」と告知されています(ポパイズのホームページより)

単なるチキンサンドイッチがなぜそこまで人気になるのか理解に苦しむと言う人も多いと思いますが、そんなにおいしいの? と率直な疑問も浮かぶことでしょう。ポパイズとチックフィレイの特徴を少し紹介します。チキンサンドが看板商品として人気のチックフィレイは、ピーナツ油でカラッと揚げたサクサクの衣とジューシーな骨なし胸肉が特徴のフライドチキンをブリオッシュバンに挟んだチキンサンドのほか、よりヘルシーなグリルチキンのサンドイッチなども展開して今や全米3位のファストフードチェーン店に急成長しています。チキンサンドの特徴は、フライドチキンとピクルスをバンズに挟んだだけのシンプルなもので、8種類のソースから好みのものを選んでかけることができます。

チックフィレイのチキンサンドはシンプルな分、フライドチキンのおいしさをダイレクトに楽しめます
チックフィレイのチキンサンドはシンプルな分、フライドチキンのおいしさをダイレクトに楽しめます

一方のポパイズは、オリジナルのスパイシーなシーズニングに胸肉を12時間漬け込んで揚げたルイジアナスタイルのフライドチキンが人気で、全米で3000店舗以上を展開しています。チキンサンドイッチは、チックフィレイと同様に同店のフライドチキンをピクルスと一緒にブリオッシュバンで挟んだもので、チキンの味そのものが楽しめるのが特徴です。

全米を熱狂させたこの騒動は、CNNテレビなど大手メディアでも「チキンサンド戦争」として報じられ、「今年は間違いなくピッグイヤー(亥年)ではなく、チキンイヤーだ」とその過熱ぶりを伝えています。この状況に便乗しようと、他のファストフードチェーンも参戦して次々と新商品を発売して日を追うごとにさらに騒動は大きくなっていきました。マクドナルドは「スパイシーBBQチキンサンド」を、ケンタッキーは甘いグレイズドーナツでフライドチキンを挟んだ「フライドチキン&ドーナツ」を東部で試験的に発売し、甘いドーナツとフライドチキンの悪魔的コンビもSNSで大きな話題となりました。

ケンタッキーが試験販売しているフライドチキンとドーナツの異色コンビは、意外にもハマる人が続出といわれています(ケンタッキーフライドチキンのサイトより)
ケンタッキーが試験販売しているフライドチキンとドーナツの異色コンビは、意外にもハマる人が続出といわれています(ケンタッキーフライドチキンのサイトより)

ここロサンゼルス(LA)でも近年、フライドチキン専門店が次々とオープンしていてフライドチキンがジワジワと人気を集めています。日本のフライドチキンとは一味違う南部風のフライドチキンは、クリスピーな衣とジューシーな鶏肉、スパイスが病み付きになるおいしさです。チックフィレイもポパイズも日本未上陸なので、LAを訪れる機会があればぜひ試してみて下さい。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)