ロサンゼルス(LA)では自宅待機命令が出されて3週間が過ぎ、人々の生活や意識にも大きな変化が起きています。1カ月だった当初の予定からさらに1カ月近く延期され、5月15日まで自宅待機命令が続くことが決まったLAでは、大多数の市民が政策に賛成しているといいます。発令当初はまだ危機感がなかった人たちも、今では人との距離を6フィート(約1.8m)保つソーシャル・ディスタンシングを徹底し、不要不急の外出を控えている結果として現在もニューヨークのような医療崩壊を起こしていないことを理解しています。もちろん不自由な生活や失業、金銭的困窮に陥っている人もたくさんいますが、ニューヨークやイタリアの悲惨な状況を目の当たりにしているので、今は命を守ることが重要だと感じているのです。

この3週間あまりで人々の日常や生活はどのように変化したのでしょう。長引く自宅待機で起きた様々な変化や問題点、新たな発見を振り返ってみました。

スーパーマーケットには買い占めをしないよう呼びかける張り紙も
スーパーマーケットには買い占めをしないよう呼びかける張り紙も

●買い物に出かけるのも命がけ

当初の買い占めは一段落し、多くのスーパーで一部の品薄商品を除いて食料品はほぼ普通に購入できるようになりましたが、今では買い物に出かけることそのものがリスクだと周知されています。多くの人が使い捨ての手袋を着用し、できる限り他の客と離れて不必要な物には極力触らないよう細心の注意を払っています。先週末から買い物客はマスク着用が義務化されましたが、中にはバンダナなどで目以外全てを覆い、帽子にサングラスとまるで強盗犯のようないでたちやバイクのヘルメット姿で買い物する人もおり、買い物に行くのも命がけと言った雰囲気がひしひしと伝わってきます。筆者の周囲でも、もう2週間以上買い物に行っていないという人がたくさんおり、買い物に行くのが怖いという人が増えています。

LA市も買い物は週1回、できれば2週間に1回にすべきとのガイドラインを示しており、スーパーマーケットでは入店人数を制限し、買い出しは家族連れではなく、1人で行くよう求めています。店内では人と接触しないよう通路を一方通行にしたり、レジでは店員と客の間にプラスチックの防護板を設置し、ショッピングカートや会計時にクレジットカードを入れる機械はその都度アルコール消毒されるなどの措置を行うスーパーも目立ちます。

●徹底した感染予防対策

手洗いやアルコール消毒はすでに徹底されていますが、今多くの人が取り組んでいる感染予防は、買い物した商品や宅配で届いた荷物の処理。買い物では手袋を着用し、購入する物以外の商品には触れないなど基本的な対策は多くの人が実践していますが、購入した物にウイルスが付着している可能性があることから「冷蔵・冷凍以外の商品やすぐ使用しない物は最低3日間、買ってきたままの状態で玄関や車庫に放置すること」が推奨されています。箱類には1日、プラスチックには3日間はウイルスが付着すると考えられているからです。それができない場合は、お菓子やシリアルなど箱ものは外箱を外して中身を取り出し、プラスチック容器はアルコール消毒、パンなどビニール入りの食品は別の清潔な容器に移し替え、野菜や果物は流水で20秒間洗い流すことを多くの人が実践しています。

また、宅配便は家の外でダンボールを開けて中身を消毒するなどの対策を取る人も増えています。さらに帰宅時は外で靴を脱ぐだけでなく、家に入る前に全ての服を脱いでビニール袋に入れて洗濯機に投入し、自身はすぐにシャワールームに直行するという生活を送る人もいます。

空気がきれいになり、遠くの山も見えるようになったLA
空気がきれいになり、遠くの山も見えるようになったLA

●大気汚染減少で空気は綺麗になったけど、エコに逆行?!

多くの人が感じている変化の一つが、空気がきれいになったこと。車社会のLAでは毎日当たり前の光景だった渋滞がなくなり、気が付くとそれまで排気ガスで見えなかった遠くの山やハリウッドサインが綺麗に見えるようになったという声があちらこちらから聞こえてきます。

空気が綺麗になった一方で、スターバックスが持参したタンブラーでのドリンク提供を取りやめ使い捨てカップのみ提供し始めた動きは業界全体に広がり、使い捨てプラスチック問題はエコ時代とは逆行する流れに。スーパーマーケットでも感染予防対策からエコバッグの持ち込みが禁止され、店側が提供する紙や再利用可能なプラバッグの使用が求められていますが、もちろんこれらも再利用せずゴミになります。また、多くの人が使い捨てのゴムやプラスチック製手袋を毎日利用しており、それらがスーパーの駐車場や道端に大量に捨てられていることも社会問題になっています。

●消えたトイレットペーパーのなぞ

危機感から大量の買い占めが起きて棚から消えたトイレットペーパーは、3週間以上経った今も入手困難な状態が続いています。1人1パックと購入制限をしていますが、多くの人がトイレットペーパー探しに奔走される日は続いており、自宅にある在庫があと何日持つか計算してくれるサイトやトイレットペーパーを見かけた人が投稿して自宅周辺で販売している場所を検索できるサイトなども登場しています。

それでもなかなか買えないトイレットペーパーに、どれだけ買い占めしている人がいるのだろうと思っていたところ、外出自粛で自宅で過ごす人が増えたことで家庭用トイレットペーパーの需要そのものが倍増していることが要因とニュースになっていました。現在は需要に対して供給が追い付いていないのが現状のようですが、他にもペーパータオルや自宅待機で時間を持て余した人たちがパン作りに夢中になっていることから小麦粉やイーストの需要も急増。ヘアサロンの閉鎖に伴ってヘアカラーが入手困難になるなど、意外な商品が今も品薄になっています。

リカーストアの入り口にはせきがあったり、具合が悪い人は入店しないよう求める看板が
リカーストアの入り口にはせきがあったり、具合が悪い人は入店しないよう求める看板が

●アルコール中毒が増える?

長引く自宅待機で1日中家に籠っているとストレスもたまり、飲むしかないという気分になる人が増えているようで、アルコールの需要も高まっています。ビールやワインはもちろん、テキーラやウォッカと言ったハードリカーが特に売れているといいます。専門家はアルコール中毒患者が増えることを懸念しており、自宅待機命令が解除された時にはリハビリ施設に駆け込む人が増えると警告しています。

●トークショーやニュースはリモートが当たり前に

人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」が番組史上初となるリモート放送を開始し、ホストとして新型コロナウイルスに感染して回復したトム・ハンクスが自宅のキッチンから出演して話題になりましたが、今やテレビ界ではトーク番組もニュースも自宅からのリモート出演が当たり前になっています。毎日行われるカリフォルニア州知事とロサンゼルス市長による記者会見も、記者は専用の電話回線を使って参加する形式が取られています。

また、映画館が閉鎖され新作映画の公開ができないハリウッドでは、従来の映画公開方法を見直す動きも出ています。すでに上映できない作品のオンライン公開も始まっており、ユニバーサルスタジオは「トロールズ ミュージック★パワー」を劇場公開が予定されていた10日からオンラインで配信。メジャースタジオとしては初の試みで、映画界にとって新たなビジネスチャンスになるのか注目されています。

ファーマーズマーケットでもソーシャル・ディスタンシングを保って買い物をする人々
ファーマーズマーケットでもソーシャル・ディスタンシングを保って買い物をする人々

●保護犬や猫がシェルターから消える

外出禁止が思わぬ効果を引き起こしたのが、保護犬や猫の引き取り。家に籠る人々が、癒しや相棒を求めて動物保護施設から犬や猫を引き取り里親になる動きが活発になり、多くの施設で全ての犬や猫が引き取られるという現象が起きています。

●今後もソーシャル・ディスタンシングは続く?

今ではソーシャル・ディスタンシングは、すっかり人々の生活の一部として受け入れられています。散歩で他人とすれ違う際は、ほとんどの人が道の端に寄ったり進路を変えたりして近づかないよう相手と距離を開けますし、買い物で並ぶ際にも印がつけられた立ち位置で順番が来るまで待つのが当たり前になっています。デリバリーや宅配も配達員と直接接することなく荷物を受け取る措置が取られ、レストランでのテイクアウトオーダーはオンラインや店の入り口に設置されたカウンターで受け付けるなど人との接触機会を減らす工夫がされています。

当面は経済活動を再開させた後も実行することを勧める専門家が多く、今後もワクチンや治療薬が開発されるまではしばらくソーシャル・ディスタンシングは継続されることでしょう。早期の経済活動再開に慎重な姿勢を見せる人も少なくなく、今後は第二波の到来を防ぎながらどのタイミングでどのように経済活動を再開させていくのかが焦点となってきそうです。

車も人も消えたサンタモニカのダウンタウン
車も人も消えたサンタモニカのダウンタウン

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)