芸備線の各駅訪問はダイヤの関係で1度入った広島県から岡山県に逆戻り。芸備線の所属ではないのに、事実上芸備線の駅では簡素すぎる駅とその周辺の空気を味わい、全くの逆ともいえる素晴らしい木造駅舎に目を奪われた。とにかく濃度の高い2駅である。(訪問は3月15、16日)
初訪問を果たした内名で備後落合から折り返してきた新見行きを待つ。次の列車は5時間半後の20時41分なので、これを逃すと大変だ。そして再び岡山県へと向かう。2日間の初日で広島県に入ったのは、実は内名だけだった。
とにかく今回は内名を最優先とした。この駅だけが国道からはるかに遠く付近にバス路線も全くないからだ。いつものように急に面倒くさくなって「また今度」とならないよう、元気な初日に組み入れた。とにかく内名での時間にすっかり満足して列車に乗り込んだ。
◆内名15時06分→布原15時56分
岡山からでも広島からでも三次~新見をつないでくれる1日1本の列車とあって、こちらも同業者を中心ににぎわっていた。目指すは周囲に民家のないレベルでは内名と好勝負かそれ以上の布原。乗客は多いが、内名から乗車した客は私だけだったし、布原で降りるのももちろん私だけ…と思ったら、もう1人の旅客が降り、私はすっかり動揺してしまった。(写真1、2)
当駅について説明しよう。新見と備中神代の間にあり、所属は伯備線である。なぜ芸備線の扱いを受けるのかというと、芸備線の列車しか停車しないからだ。ホームは1両分の有効長しかなく、伯備線の電車は最低でも2両編成なのではみ出してしまう。というか周辺は川と深い山に囲まれ、民家も少なく、考えようによっては芸備線の1日6往復(平日)でも十分な気がしないでもない(伯備線の普通も8往復しかない区間だが)。
そんな環境下の駅だが、2面2線と列車交換(すれ違い)ができる立派な構造となっている。布原は元々、信号場だったからだ。信号場については3月17日の関西本線の記事でも説明した。要は単線区間内におけるすれ違い設備である。本来なら駅で行うものだが、山中で周囲の人口が少ない場合などは交換施設だけの信号場となる。ただし国鉄からJRへの移行時、全国で多くの信号場が駅へと格上げされた。布原もそのひとつ。
まだ伯備線にSLが走っていたころ、三重連つまりSLが3機つながれて走る雄大な姿に全国からファンが殺到し、布原の名は有名になった。今も鉄道写真のメッカであることに変わりはないが雪も消え、紅葉でもないこの時期に私以外に降車客がいるとは驚きだった。川沿いをスタスタと歩いて去っていく。地元の方には見えなかったが、私など足元にも及ばないマニアなのかもしれない。(写真3、4)
ちなみに私も徒歩を考えていた。備中神代まで50分、新見まで90分ぐらいではないかと思われる。ただ備中神代に着いてもしばらく列車はない。新見の市街地の端まで1時間近くあれば歩けるだろう。そこまで行けばバスもあるしタクシーも呼べる。現実的にはそちらだが、そこに至るまでの道路が大変だ。内名と同じく初見の車では困りそうな狭隘(きょうあい)で、徒歩の最中にGPSが切れたらどうしようなどと不安になり、朝の生山~備中神代間の電車で時刻表とにらめっこ。この行程なら布原滞在25分で東城行きの列車が来ることが分かり、急きょ変更した。
正直もう少し駅を味わいたいところだが、限られた時間で駅を堪能しよう。2面2線が千鳥状に配置され、構内踏切で横断する。駅の前は道路と川だが、最終的には川の向こうに行かないとどこにも行けない。川の向こうに民家が数軒。当然バス路線などはない。そんな景色。前述のマニア氏の姿は消えてしまったが、向こうから再び人の姿が。走ってくる。「?」。まだ列車まで時間があるよ、と思ったら、私の前を駆け抜けていった。よく見るとランニング中である。奥に車を止めているので、ここまで来てランニングをされているようだ。なにゆえ布原の地が選ばれたのかは私には分からない。ただ前後から車が来ることはほぼないことだけは間違いない。(写真5、6)
再び駅に目を向けると、とあるものに気付いた。駅舎どころか待合室もない構造だが、時刻表の上に何かが置かれているなぁ、と見ると駅ノートだった。なかなか斬新にしてシュールな設置に度肝を抜かれたのはいうまでもない。あっという間に25分が過ぎ列車がやってきた。実に濃い25分だった。
◆布原16時21分→野馳16時46分
言葉はいらない。そんな駅である。「のち」と読む。昭和初期からの木造駅舎がそのままの姿で残る。昨春も姫新線の美作千代、岩山を紹介したが、それらと同じく美しい駅舎で、なおかつタクシー会社が入居して簡易委託を行っているため有人窓口があり、昔の風情が残るのが、なお素晴らしい。ちなみに当駅の「国鉄旅行連絡所」は「国鉄」の文字がきれいに消されていた。(写真7~10)
時間的にも下校の高校生が多く、ほとんどのお客さんがゾロゾロと降りていった。かつては2面あったホームは1面となっているが風情は損なわれていない。
さて、本日は青春18きっぷは利用していない。この時点で残り4回。当初は使うつもりだったが、伯備線を特急利用した時点で、1日分の目安となる2300円も使わないだろうと考えたからだ。ちなみに青春18きっぷのようなフリーきっぷを利用した場合、駅や路線の利用実績にカウントされない。どこをどう乗ったのか、いちいちチェックできない上、きっぷというものは基本的に回収されて初めて当該区間の実績となる。途中下車も同様。18きっぷがカウントされるなら各地のローカル線利用者数はグンと増えるに違いない。(写真11~14)
その点、本日はすべて現金乗車(特急のカード払いも含む)である。伯備線や芸備線の利用実績にほんの少し貢献したのではないか。ここまで生山~備中神代、矢神~内名、内名~布原、布原~野馳と利用。内名~布原なんて、1年にどれほどの現金利用があるのか想像もつかないけど(笑い)、今日の最後となる野馳では、せっかく窓口があるのだから整理券+現金ではなくきっぷを買おう。30分後の列車で本日の宿泊地、新見へと向かった。【高木茂久】(写真15)

















