家族で釣り-。その代名詞はちょっと前まで東京湾のシロギスだった。その座をアジに奪われて、ファミリーフィッシングのスターだったキスはどこに隠れてしまったのか? いますよ、中ノ瀬~木更津沖で増殖中なんです。しかも20センチ前後のデカい個体が主流だったり。攻略方法は「縦の動き」だ。シロギスの専門船の山下橋「広島屋」(石井晃船長)から様子を見てきた。

アオイソメを使った釣りといえば?

アジ。

この波は最近のことだ。東京湾でビギナー向けで、ファミリーでも楽しめる対象魚はシロギスだった。着底さえさせれば、ボウズ(釣果ゼロ)はなく「つ抜け」経験もキスで初めて味わった釣り人も多かったに違いない。

ちなみに「つ抜け」とは10匹以上を釣ることを指す。1から9まで数えるときに、「ひとつ」「ふたつ」…「ここのつ」と1ケタまでには最後に「つ」がつきまとうが10(とお)から先の数字には「つ」がつかない。「つ」から解放されるので、10匹以上釣ることを「つ抜け」と称するのだ。

そんなキスなのに、つ抜けなしの状況が3年前から起きていた。

「東京湾からキスがいなくなってしまったのか?」

誰もがそう勘違いをしていた。冗談じゃない。東京湾のど真ん中にキスは息づいていた。広島屋の看板はキスだ。現在、アジの数釣りでは東京湾でも三本指に入ると思われるが、実はキス乗合がメインの船宿なのだ。

石井船長 この3年ぐらいはどんなに探ってもキスの気配を感じなかった。それが、年末ぐらいから大きなキスがまとまって釣れるようになってきた。なぜキスが戻ってきたのか、本当の理由は分かりませんね。

キス釣りは大きく2種がある。天ビンを使うちょい投げパターンと、オモリが一番下になる胴突きパターン。広島屋では代々、初心者でも無理なく釣れる胴突き仕掛けを推している。

オモリ15号を底につけて、道糸を張って緩めて、枝スからぶら下がるアオイソメが不規則に海中~底を漂わせる。アクションが不規則なので、思わずキスが飛びつく。向こうアワセなのでサオがブルブルしてからゆっくりためてハリ掛かりを深くしていけばよい。初心者に無理がなく、慣れてくれば夢の「つ抜け」もできちゃいそうだ。

昨年からリニューアル工事をしていた母屋が完成し、今月7日からお客さんが入れて、休憩できるようになった。以前の広島屋を知っている人は、そのまま店の前を素通りしてしまうかもしれない。そのぐらい激変しているのだが、キスの触りやアタリも同じように見違えるようになってきているのだ。

この日は常連で、過去に広島屋の年間チャンピオンにもなっている「チバちゃん」こと千葉徹さん(49=八潮市)が同乗してくれた。水深24メートルで最初にヒットしたのはなんとタコボウズ記者(寺沢です)。写真を撮ろうとしてサオを船べりに置いた。船の揺れが誘いになったのか、石井船長から「ほらっ、タコさん、釣れてるよ」。これがヒントになった。

チバちゃんがサオを高く上げて落とす動作をして、オモリが着底するかしないかで、20センチ級のキスをヒットさせた。

チバちゃん 上から落ちてくるエサに反応する。タコさんの置いたサオがちょっと底から浮いていたのかもしれない。動くエサに反応する。ならば上から降ってくるイメージで。うまくハマりました。

この仕掛けを上下に動かす“エレベーター釣法”でチバちゃんは145匹、タコボウズ記者は途中、干物作りもしていたので41匹。20センチ前後を中心に大型が目立った。東京湾のシロギス、完全復活とのろしをあげても言い過ぎではないのかもしれない。【寺沢卓】

▼船 山下橋「広島屋」【電話】090・8874・4624。シロギスの乗合船は午前7時30分出船でエサ付き8500円。広島屋特製仕掛け(2組)は1本バリ250円、2本バリ300円。