夏の思い出作りや、初めての釣りにピッタリの船がある。千葉・保田「村井丸」のファミリーフィッシングだ。親子や初心者を対象とした、小アジ主体のサビキ釣り。港から10分もかからない近場でサオを出し、群れに当たれば、あっという間に20~30匹は確保できる。釣りをするのも午前または午後の3時間と短く、まさにお手軽な入門編になる。

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12~20センチのアジが鈴なりだ。食いが立てば2点掛け、3点掛けは当たり前。時には5~6本針にパーフェクトと、サビキ釣りならではの光景が、保田漁港の目の前の沖で見られた。

水深は約10~20メートルと浅く、釣りやすい。通常8~15本も針をつけるサビキもここでは4~6本と、初心者でも扱いやすい。オモリが着底したら、船長が指示する水深でコマセを出し、アタリを待つ。大きな群れが回遊して活性が上がれば、サオ先がブルブルと絞り込まれる。最初のアタリから10秒ほど待って追い食いを待てば、1匹が2匹、2匹が3匹と針に掛かっていく。

右胴の間に陣取った高橋徹さん(46=横浜市)に、あかりさん(小6)とななみさん(小4)の姉妹はアジ計70匹。村井丸に通い始めて5年の父に姉が「私も釣りがしたい」とせがみ、小3から乗っているという。そこへ「お姉ちゃんだけじゃなく、私も」と、昨年からは3人になった。姉妹はそろって20匹超え。「よく釣れて楽しかった」(あかりさん)「クロメバル(20センチ級)も2匹釣れてうれしかった」(ななみさん)。そろって笑顔を見せた。

同じ千葉県内の富津市にある祖母宅に宿泊して、バーベキューを楽しむという。立派なお土産もできた。

左のミヨシ(最前方)では時田正義さん(44=千葉市)が、息子の翔之助君(小5)の獲物の針外しに大忙し。「3年前にも乗ったが、子供は船酔いしてしまった」と振り返る。この日は親子でアジ60匹、イサキ10匹。翔之助君も多点掛けを連発と、大健闘した。「楽しかったからまた乗りたい」と満足そうだった。

かじを取った志村秀行船長(53)によると、もともとファミリーフィッシングはシロギスを対象にしていたという。それがアジに対象魚を変更して約10年。すっかり、夏の定番になった。「アジは腹を割いてハラワタとエラを手で取り、唐揚げにしてポン酢をかけるとおいしいです。頭まで取ってパン粉を付ければフライに。イサキは塩焼き。クロメバルやカサゴは、ハラワタを取って姿揚げがおすすめです」(志村船長)。

ウイズコロナの時代。遠出はなかなか難しい。バブル崩壊後の旅行業界ではないが、「安・近・短(あん・きん・たん)」がレジャーのキーワードになりそうだ。安くて近場で短い時間で楽しめる。そんなうってつけのファミリーフィッシングは、今月末まで楽しめる。

▼船宿 村井丸【電話】0470・55・1121。ファミリーフィッシングは午前7時30分から午前10時30分と、正午から午後3時の2便。定員16人の電話予約制。できれば出船60分前までに飲食物を調達して宿で受け付けを済ませる。1人4000円。氷・コマセ付き。貸しザオ1本500円から。ライフジャケットのレンタルあり。船はトイレ、お湯のポットなど完備。船着き場は宿と離れているので、分かる人の車について行くといい。駐車証は、車内の分かりやすい場所に置いてください。http://www.muraimaru.co.jp

【アドバイス】

◆暑さ対策 帽子は必需品。タオルは複数本。1本は首筋が日焼けしないように巻くといい。日焼け止めは出船前に塗っておく。汗をかいたり海水にぬれてもいいよう、着替えも用意。

◆飲み物など 熱中症予防や疲れ取りに、お茶や水のほか、スポーツドリンク、甘酒、ゼリー飲料、簡単に開けられる果物の缶詰などを好みに応じて。クーラーボックスの中に冷やしておけば、釣りの最中に肌や額などにも当てられる。また、空いたペットボトルに水道水を入れてクーラーに入れる人もいる。これも途中や帰港後に肌や頭をぬらすと、気持ちいい。

◆足元 長靴またはマリンシューズを。子供は、はきつぶしかけている上履きでも船の上で滑らないから、便利。

◆釣り用に 魚をつかむためのグリップ、針をのまれた時に外すプライヤー、釣り糸を切るハサミがあると便利。飲み物と魚を入れるクーラーは、釣り宿などでも1個1000円前後で販売している。