腹を立てて自分の感情をぶつける「怒る」に対し「叱る」には目上の者が相手のことを思って強く言うというニュアンスがあります。親が子を叱る、上司が部下を叱る-子が親を、部下が上司をとは言いません。

 叱る主目的は、相手にリクエストを伝えることです。「今どうして欲しいか」「次からどうして欲しいか」です。自分の気持ちを伝えるのはあくまでサブです。ところが、多くの人は主と従を逆にし、報告をしてこなかった部下に対し「何でお前はすぐに報告してこなかったんだ」という言い方をしてしまいがちです。「何でできないんだ」にはリクエストが入っていません。あるのは「俺の立場を理解しろ」「俺の気持ちを分かれよ」です。部下にしてみたら「すみませんでした」と謝って言い訳するしかありません。

 報告をしてこなかったら伝えなければいけないのは「どうしたら漏れなく報告できるか考えて欲しい」であり「次からは、すぐに報告して欲しい」というリクエストです。「なぜできないのか」「何でお前は」と気持ちを伝える言葉はあくまで従で、なくてもいいことです。

 以前、日本アンガーマネジメント協会で行った上司と部下のアンケートを紹介しました。叱られた側は53・8%がパワハラと感じ、叱られた後、40・6%が仕事のモチベーションが低下、25・7%が上司を避けるようになったと回答しています。叱ることはリクエストを伝えることです。伝えなくてはいけないことは何か、整理してから部下に対しましょう。