<心不全(3)>

 心不全は、心臓の機能が低下した状態です。心不全を引き起こすのは老化が原因になりますが、それだけではなく、原因となる疾患は多くあります。「高血圧」「狭心症・心筋梗塞」「心筋症」「心臓弁膜症」などの疾患を患うと、心不全への可能性はグンと高まります。それらの原因となる疾患を患っている場合は、薬物療法のみならず、その心不全を招く疾患の治療をすることが、重要なポイントとなります。

 狭心症・心筋梗塞で冠動脈が狭窄(きょうさく)していたり、詰まったりしている場合には早急に冠動脈バイパス手術で、血液の滞りをなくしてスムーズに血液が流れるようにすることです。カテーテルの治療が多く行われていますが、再発などのことを考えると、最初にしっかりバイパス手術をしておく方が、心臓には良いことがわかっています。

 また、心臓弁膜症の1つ「僧帽弁閉鎖不全症」は、進行すると心不全になってしまう疾患で、患者さんの多いことで知られています。状態が進行している場合は、よきタイミングで手術を選択して治しましょう。多くの場合は弁形成術で対応します。

 また、心不全の原因が、心臓の筋肉の異常によって心臓がうまく機能しなくなる「心筋症」の場合は、やはりタイミングをみて手術が行われます。

 そして、治療で進行を抑えるのが難しくなった「重症心不全」まで進んでしまうと、「心臓再同期療法」「心臓移植」「人工心臓」などが行われます。心臓の収縮に問題のあるケースに対し、ペースメーカーでリズムを正しく調整するのが心臓再同期療法です。心臓移植は、すべての治療をしても心不全の症状が強いケースで対象となります。

 その心臓移植を待つ間に使うことがあるのが人工心臓。しかし、今日では心臓移植に代わることのできる治療になってきています。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)