いびきは、うるさくて迷惑なだけではありません。「がんになりやすい」という驚くべき報告もあるのです。友だち数人と同じ部屋に泊まったら妙にいびきが大きい人がいたり、パートナーのいびきがひどくて眠れない人もいるでしょう。そんな「いびきをかいて寝る人」は「大腸がん」になりやすいという一瞬「なぜ?」と思うような報告があります。

 ハーバード大学医学部が10万人を対象に行った調査では、睡眠時間が9時間以上の、太っていていびきをかく人は、1日7時間前後寝ている人と比べて大腸がんになる危険性が1・4倍~2倍も増加するという結果でした。

 太っている人やいびきをかく人は、睡眠時、酸素をうまく取り込めず、酸欠状態になりやすく、悪性腫瘍が発生しやすいのではないかということです。

 一晩に10秒以上呼吸が止まった状態が30回以上か、1時間に5回以上呼吸が止まると「睡眠時無呼吸症候群」と診断されます。呼吸が止まるのは、のどが狭くなって空気が通りにくくなるからですが、さまざまな怖い病気の発症率を高めたり、寿命を縮めますので、注意が必要です。

 太っている人は脂肪で気道がさらに狭くなり、空気がよけい通りにくくなります。つまり、多くの睡眠時無呼吸症候群の原因は肥満ということですが、実は肥満以外にもう1つ特徴があります。

 それは、小顔です。アジア人、日本人には小顔な人が多く、肥満でなくても、いびきが生じ、睡眠時無呼吸症候群の原因となるのです。

 「独身なのでいびきをかいているかわかりません」という人は、大きく口を開けて「のどちんこ」が見えるかどうか確認してください。見えない人は、注意が必要です。

 軽いいびきであれば簡単に治せる方法があります。その秘密兵器の1つが「抱き枕」です。抱き枕で自然に横向きになることで、のどにある気道が確保されるのです。

 抱き枕を買うのも面倒くさいという無精な? 人には、簡単な方法があります。それは「ばんそうこう」。寝るときにばんそうこうで口を閉じれば、いびきは簡単に止まります。見た人は驚くかもしれませんが、電車での移動中の昼寝などにも良いでしょう。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。