心の健康が脅かされ、不調になると、心身にさまざまな影響を及ぼすようになる。うつ状態に多くみられる強い気分の落ち込みは、具体的にどのような状態をもたらすのか。

「4週間でぐっすり眠れる本」(さくら舎)の著者で、睡眠改善で健康を取り戻す活動「目覚め方改革プロジェクト」のメンバーである東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科の岡島義(いさ)准教授(臨床心理士・専門行動療法士・産業カウンセラー)はこう話す。

「まずは衣食が損なわれやすい。食事が取れない、ファッションが気にならない。パジャマでも平気になってしまうこともあるでしょう。このように、それまではやれていたことができなくなることが一番の問題なのです」

食事に限らず、うつ状態というのは、すべてのエネルギーが減少し、無気力な状態に陥っていることが多い。

「すべてのものに注意が払えなくなり、全部が自分の内側に向いてしまいます。つまり外へエネルギーを使うことができなくなる。『なんで自分はこんなことをしちゃったんだろう』『どうしてあの人からそんなことを言われなくてはいけないのだ』といった考えにばかり、エネルギーを注ぐことになってしまいます」

うつ状態では、「エネルギーが内側に向いている」ということが一番の特徴である。岡島准教授はこう指摘する。

「外に向いている可能性はあるけれど、実際には自分の中で完結している状態です。自分の中で闘っているような。攻撃というと、相手に対してのものですが、それすらしない。つまり自分の中での対話にエネルギーを使っている。自分の中で仮想の人物をつくり、それに対して『なんであんなことを』といったことを延々とやってしまうわけ。要は怒りを出せない『アンガーイン』という状態です」

気分が落ち込むきっかけになったことを頭の中で繰り返しているような状態がずっと続くとしたら、さぞ耐え難いことに違いない。