感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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保健所からの通達で「発熱外来」の設置が要請されると、どこの病院も非常に悩みます。東京の立地で発熱外来を、一般外来と動線を完全に分離させて運用できる施設は、かなり少ないです。

国は病院の外来機能を縮小させる方向に動いていたので、せいぜい数人の発熱者が待機できるスペースしかない病院がほとんどでしょう。応急的なスペースで応急的な人員を手配するのが精いっぱいです。

発熱外来は、当初は「武漢からの来航者及びその接触者で発熱がみられる患者」への対応でしたが、正直言うとそんな患者はほとんど現れませんでした。武漢が封鎖されたからです。「北京から来たから大丈夫」とか、「外科に来たら熱があるから」ということで「診る、診ない」問題が多発しました。

患者が集中すると待ち時間が問題となり、中には3時間待たされた胆管炎の患者が発生したりしました。「コロナ疑いで来た人、インフルエンザ疑いで来た人、他の発熱の3カ所作れないか?」という提案もありましたが、場所も人員もないのです。それに最初からその3つを分離できたら、苦労しません。

コロナ陽性患者をそのまま一般の外来で見てしまうと、そして医療スタッフに感染を認めると、その医療機関は診療停止などの対応が必要になります。「コロナ疑いはお断り」が、一番費用対効果的に良い判断になるのが悔しいですが、病院としてそのような判断はできません。

方法論としては「すべてコロナ疑いとする」ことしかコロナ対応でエラーを防ぐ方法はないと、一般的に判断されます。しかし、これがなかなか大変です。隔離室もしくは隔離場所で待機してもらい、防護服を着て診療を行う。検体採取した際にしぶきなどで防護具が汚染されている可能性があるので、防護具の交換が必要になる。そして採取した部屋は換気と消毒が行われる-。海外のニュース見るとあまり着替えてないようですし、換気の間もなく、次から次へ検査しているようです。

ただ、新型コロナウイルス感染者の6割は熱がないとの情報が来ると、脱力感を感じざるを得ませんでした。