感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

   ◇   ◇   ◇

「緊急事態宣言」も解除され、さてそろそろコロナから解放か? と思われた6月半ばから、何だか雲行きが怪しくなって来ました。私は5月の連休明けに、東京都内では「ほぼ問題にならない」と予想していたのですが、なぜか陽性件数は増えていきました。

まずは接待を伴う飲食店における陽性者が報告されました。そして各種業態でのクラスター、さらに医療関連施設において、といった具合でした。

確かに検査の運用・精度が変わりました。1つ目は検査件数が増えました。2つ目は最新機器の新規導入により精度上昇と検査までの時間が短縮しました。3つ目は採取キットもインフルエンザ抗原検出用から、ウイルスPCR遺伝子検体専用になりました。

SARS(重症急性呼吸器症候群)のときは、鼻腔(びくう)よりも咽頭の検体がPCR陽性率が高いとの記載はありましたが、今回の新型コロナでは鼻腔の方が検出が多かったです。そして微妙なのですが、午前中に採取した方のほうが、午後よりも陰性率が高い傾向です。やはり唾液の中のRNAse(RNA分解酵素)の影響が大きかったのかもしれません。すぐに検査できる場合は、咽頭部の方がいいようです。

陽性例は多いものの、多くの方は軽症という流れになりました。全体的には弱毒化したとも捉えることはできますが、今まで検出できなかった患者さんが増えた可能性も考慮されます。

遺伝子が変異したともいわれますが、それが毒性と感染性にどのように関与するかは、今の医学でも半分未知の世界です。コロナウイルスの変異速度も問題となりましたが、インフルエンザのほうが高い頻度で変異しています。

新型コロナは、軽症者といえども「2類感染症」で隔離対象です。ただ、既に「新型インフルエンザ特措法」でいう「拡大フェーズ」の状況だと思います。街中であふれている感染症を隔離する意義・効果は、やや疑問です。

対応しているコロナ陽性入院観察患者を見ていて思うことは、せきや熱などの症状もさることながら、自由を奪われることも、人としてつらいことだと感じざるを得ませんでした。