新型コロナウイルスの出現によって、私たちを取り巻く生活環境にはたくさんの変化がありました。密を避けるための行動のひとつとしてビジネスマンの出勤体制が見直されたこともその1つです。

私のいる医療業界でも、学会やセミナー、症例検討会といった複数人での集まりはすべてオンラインになりました。雑誌や新聞の取材だけでなく、テレビもZoomで録画する時代になっています。

互いに顔を合わせないで済む作業が増えたことで時間を有効に使えるといったメリットがある半面、健康を害する現象もあちこちでささやかれるようになっています。

痛みや腫れを伴い緊急で歯科を受診される患者さんの多くが、狂った生活リズムにより、ルーティンだった歯磨きを怠ってしまったとお話しされていました。定期的に拝見していた患者さんのお口の中があっという間に荒れ果ててしまう状況が散見されるのは、歯科医として大変考えさせられる出来事でした。

また、世界中で問題視されている生活習慣病の悪化のひとつに、テレワークの普及による「コロナ肥満」があります。歯科と肥満は一見縁遠いように思われがちですが、実はそうではないのです。

2003~12年にかけて行われた、日本大学の川戸貴行教授と公益財団法人ライオン歯科研究所の調査で、年1回の歯科検診で歯周ポケット(歯周病の典型的な症状)が6回以上発見された方は、歯周病でない方に比べて3倍も肥満になりやすいということがわかったのです。

このメカニズムは現在さまざまな角度から研究が進んでいます。コロナ太りが気になる方、ジムに慌てて通う前に、まずはオーラルケアを-。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)日本大学歯学部卒。同大学大学院歯学研究科を経て東京医科歯科大学歯学部付属病院勤務。テレビやラジオでのわかりやすい解説が評判となり、雑誌のコラムや日刊スポーツでの連載を担当。文筆家としての活動も積極的に行う。現在は東京医科歯科大学非常勤講師、日本アンチエイジング歯科学会理事、複数の歯科クリニックで診療。

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私たちを取り巻く感染症と歯の関係はどのようなものなのか。新型コロナウイルスとの闘いは2年目に突入しました。歯学博士の照山裕子氏による連載では、口内ケアを充実させて健康を守る情報をお届けします。どうぞお付き合いください。