固定式の入れ歯(ブリッジ)と取り外し式の入れ歯(義歯)、どちらも一長一短があることはおわかりいただけたかと思います。

それでは近年人気の、インプラント(人工歯根)を用いた治療はどうでしょうか。

歯を失った場所に、生体親和性の高い金属(主にチタンやチタン合金)を埋め込み、その上にクラウン(上部構造)をかぶせるというシンプルな仕組みです。ブリッジのように両隣の歯を削る必要がなく、義歯のような違和感もありません。一見また自分の歯がよみがえったかのような夢のあるシステムに思えますが、実際のところはどなたにでもおすすめできるわけではないのが現実です。

ある程度の年齢になり、失った歯の本数が少ない方であればインプラント治療も効果的と判断できます。なぜなら、長年歯を失わないように努力してきた歴史や、もともとの口内環境が良好であったという背景が想像できるからです。

治療のステップに理解と同意が得られ、生涯続くメンテナンスに関しても積極的に取り組んでもらえる方であればこちらも安心して手術に臨めます。しかし、その逆で、自分の歯がほとんど残っていないという患者さんからの相談は慎重になります。なぜその環境に至ったかという経緯をたどり、セルフケアがおろそかな場合や喫煙といったリスク因子が根本にあるならば、まずはそこを改善できるか否かを話し合うことから始まります。

インプラント治療でもっとも重視しなければならないのは、日常の衛生管理です。美容外科で高額な脂肪吸引をしてもらったとしても、翌日からまた同じ食生活を送ればやがて元に戻ってしまうでしょう。インプラント治療も同様で、患者さん側の認識や協力が鍵になるということは知っておいていただきたい部分なのです。