前立腺肥大症の手術で、最初に「TURP(タープ=経尿道的前立腺切除術)」を前回取り上げました。この手術の対象は、肥大があまり大きくないケース。ポイントは、出血量を少なく抑えるために1時間以内に手術を終えることです。

加えて、TURPでもう1つ知っておいてほしいことがあります。それは、「低ナトリウム血症」のリスクがある、という点です。低ナトリウム血症は血液中のナトリウム濃度が低い状態。そうなると悪心・嘔吐(おうと)が出現し、さらに進むと意識障害や血圧低下が起こります。

なぜそのようなリスクがあるのか--。TURPは前立腺の内側を削るときに、良い視野を作るためにかん流液を流しながら行います。そのかん流液は、「電解質が入っていない溶液」と「生理食塩水」の2つが使われています。血管の中に電解質が入っていない溶液がどんどん入ってしまうと、血液が薄められて見かけ上の低ナトリウム血症を起こします。

いかに前立腺の外側の被膜に穴をあけることなく手術を終えるかが重要です。今では、生理食塩水を使っている施設が多いので、そのリスクは減りましたが、いまだに昔のように電解質が入っていない溶液を使う機材で手術を行っている施設もあります。

現在、TURPは最も長い期間、広く行われている効果的な前立腺手術。だから、前立腺の手術ではゴールドスタンダードとされています。良い手術ではあるのですが、合併症を起こしやすいというデメリットがあります。

前立腺肥大症手術の日本の平均入院期間は9・3日で、カテーテルを尿道に挿入している期間は2日間以上。日帰りで行っている施設は極めて少ないのが現状です。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)