ロボット手術(ロボット支援下手術)の中でも、心臓ロボット手術は日本では実施している病院が少ないのが現状です。年間50例以上行っている病院は27施設。すでに300台を超えるダヴィンチ(ロボット機器名)が日本には導入されているにもかかわらず、心臓でのロボット手術の広がりは遅い。その原因は3つだと思います。
第1は「ロボット手術は難しい」。これは、日本より先に導入したアメリカを見るとわかります。最初は我も我もと心臓外科医は手を挙げます。しかし実際にチャレンジしてみると、心臓ロボット手術は難しい、時間がかかる、患者さんが死んでしまった。これを体験し、皆やめていったのです。
第2は「人工心肺手術を100例以上行っている病院」。これはハードルが極めて高い。心臓の手術では心臓を止めて行うことがあります。その時には、身体に酸素を含んだ血液を送り出す心臓と肺の代わりが必要に。それが人工心肺です。人工心肺手術を100例以上は、やはり狭き門です。
そして、第3は「僧帽弁閉鎖不全症の患者さんが少ない」。僧帽弁閉鎖不全症の患者さんは年間3000件程度と少ないのです。この中の1000件が小切開手術で、250件が心臓ロボット手術、残りが開胸手術。小切開手術は6センチ程度胸を切って行う手術です。僧帽弁閉鎖不全症は患者さんが少なく、心臓ロボット手術を行っている病院も少ないので、患者さんを心臓ロボット手術の病院に紹介するケースが少ないのです。
以上の結果、心臓ロボット手術の浸透が遅れているのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

