連載の最終回なので、なぜ私は心臓ロボット手術(心臓ロボット支援下手術=ダヴィンチ)をしているかを説明させてください。それは、「患者さんが心臓手術を受けたのを忘れてしまう手術をしたいから」です。手術を受けたことを忘れるというのは、手術のキズが小さいということです。
心臓手術の基本である開胸手術は、胸を縦に25~30センチ切開します。この傷はずっと消えることはありません。お風呂に入るたびに手術跡が見えるし、そこが痛い。手術を受けた70%の人は「いつまでも違和感を持ち続けている」のです。
その点、心臓ロボット手術は1センチ程度の刺し傷が3つだけ、それも右胸の側面なので正面から見るとわかりません。また、小さな傷口は時間とともに白くなって見えなくなります。さらに、病気も完治すると検診を受けても検査技師や医師にも心臓の手術をしたことがわかりません。だから、「本当に心臓の手術を受けたのですか?」と言われます。
ただし、それは心臓ロボット手術が保険適応の僧帽弁閉鎖不全症を形成術で治療した場合です。大動脈弁狭窄(きょうさく)症で人工弁置換術(機械弁、生体弁)を受けた場合は、エックス線検査で弁が映るのでわかってしまいます。
私は刺し傷4つだった心臓ロボット手術を、刺し傷3つの手術に進化させました。心臓ロボット手術と小切開で行っているのは、私以外で心臓ロボット手術を行っている外科医。6センチ程度の小切開といえども余計な傷になります。人体に傷をつけてはいけません。だから、これからも傷がほとんどなく「心臓手術を受けたのを忘れてしまう手術」をしっかり行うとともに、進化させていきます。(おわり)(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

