クリニックにいらっしゃる患者さんからの質問のひとつに「歯を強くする食品はないですか」があります。「カルシウムをとらなかったから歯が悪くなったのでは」とおっしゃる方も少なくありません。これらはすべて誤解です。

口から健康に、と聞くと歯や歯ぐきのメンテナンスにばかり目がいきがちなのですが、食べるという行為をひもとくとこれだけでは不十分なことがわかります。

食事には<1>かむ力<2>舌の力<3>唾液量<4>飲み込む力、といった4要素がうまく重なりあうことが大切です。多くの皆さんが気にしている歯や歯ぐきは、この<1>に関しての役割しかありません。

特に年齢を重ねて変化が出やすいのは<3>の唾液量です。ほかの身体機能がそうであるように、唾液の分泌も加齢によって低下することがわかっています。唾液にはサラサラした唾液とねばねばした唾液の2種類があるのですが、このうちサラサラの方が出にくくなる傾向にあるようです。こうした体の変化で、むせやすい、食事がおいしく感じられないといった訴えが出ることがあります。入れ歯が急にこすれて痛い、合わなくなったという方もいます。服用している薬の副作用でも「口渇(口が渇くこと)」が生じますから、改善が見られなければかかりつけ医と歯科医が連携し、薬を変えてもらうことも必要です。

餅つきに例えると、唾液は打ち水です。きね(かむ力)臼(口腔=こうくう)こねる人(舌の力)がそろっていても、打ち水が足りなければまとまらないのです。唾液力を意識して、普段から口を潤わせる体操なども取り入れてみてください。食事の際に酸っぱいものを最初に食べる、何回もよくかむように習慣づけるだけでも効果があります。