私が診察治療をした「男性更年期障害(LOH症候群)」の患者さんのケースを、前回に続いてもう1人紹介します。B男さんは48歳、機関投資家で会社を経営されています。
パワフルに仕事を行ってきたのですが、部下の人たちがやめたりして仕事がうまくいかなくなり、気持ちが負のスパイラルに入ってしまったのです。それにより「不安」「いらだち」「集中力の低下」などがひどくなり、気分も落ち込むようになったのです。B男さんも前回のA男さんと同じように、インターネットで自分の症状から疾患を調べ、男性更年期障害と思って私の診察を受診されました。
私はしっかり問診などを行い、男性ホルモンの「遊離テストステロン値」を検査。すると、数値は8・5pg/mlで低めではあるものの正常値でした。ただ、正常値でも数値が低下しているので、決断力とか挑戦力が落ちているのではないかと診断し、男性ホルモン補充療法を始めるべきだと思ったのです。
そう思ったのは、職業によって男性ホルモンが高い人と低い人がいるからです。B男さんのような機関投資家や自衛官、俳優の方々は男性ホルモンが元来高いのです。反対に、医師、弁護士、聖職者などは低い。B男さんが機関投資家である点を見ると、若いころはもっと男性ホルモンは高い状態だったと思われるからです。それをB男さんに説明すると、B男さんは「男性ホルモン補充療法を受けます」即決されました。
ホルモン注射をして3、4カ月後--。「投資の判断もちゅうちょすることなくサッとでき、以前のパワーが戻りました。さらに、会社の社員の補充もうまくいき、パワー全開です」と、B男さんからうれしい声を聞くことができました。補充療法は半年でやめましたが、B男さんには2カ月に1回、状況把握に来院してもらっています。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)
◆土井直人(どい・なおと) 市ヶ谷ひもろぎクリニック院長。1987年(昭62)、群馬大学医学部卒業。日本泌尿器科学会専門医。日本腎臓病学会。メンズヘルス医学会。泌尿器科一般領域の診療活動。特に心療内科と連携して男性更年期治療に従事。

