肺の中で増殖して肺を破壊する肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)は、細菌やウイルスが感染して発症する肺炎とは異なり、ジワジワと肺を侵食していく。そのため、早期段階では自覚症状に乏しく健康診断のエックス線検査で異常が見つかり、詳しい検査をした結果、肺NTM症が判明するケースも増えているという。

「肺NTM症は結核より患者数が多いのですが、知名度が低いので、患者さんの中には、『治療を受けたくない』といわれる方もいます。確かに、早期段階では症状があまりなく、肺NTM症は他人にうつす病気でもありません。しかし、放置すると肺は徐々に壊れてしまいます」とは、公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸器センター治験管理室長、臨床医学研究科長の森本耕三医師。肺NTM症の診断・治療・研究を長年行っている。

「NTM症で肺の組織が破壊され、穴が開くように肺の一部が空洞化し、気管支も拡張すると、元の肺に戻すことが難しくなります。また、空洞や気管支拡張の部分には、別の細菌やカビが繁殖しやすく、感染増悪を繰り返すことにもつながります」(森本医師)。

空洞化した肺に合併しやすいのは、生活空間に漂うアスペルギルス(カビの一種)や緑膿(りょくのう)菌による肺炎。アスペルギルスや緑膿菌は薬が効きづらく、治療が難しいことがある。

「空洞病変に対して、当院では外科的な治療も行っています。肺がんの治療よりも難しい手術になりますが、術後は肺炎の再発もなく、日常生活を取り戻せる方もいます。重症化させない治療の大切さを多くの人に知っていただきたいと思います」と森本医師は話す。