房室結節回帰性頻拍と房室回帰性頻拍について話してきました。発作性上室性頻拍のうち、今回は心房頻拍についてです。心房頻拍は若年から高齢者まで幅広く見つかります。小児から比較的中年にかけて多いとされる異所性心房頻拍は、英語名の頭文字からイート(EAT)と呼ばれます。

心臓の電気の司令塔、刺激伝導系についてはこの連載で触れてきました。心臓の最初の電気信号を発出する会社の社長にあたる部分を洞結節(どうけっせつ)と呼びます。この異所性心房頻拍は、洞結節と同じように心房のどこかに電気信号を作りだす部分があり、時に洞結節からの信号を抑え込んで勝手に電気信号を刺激伝導系に送り込む性質があります。

突然心拍数が1分間に150回の頻拍となればわかりやすいのですが、心拍数100~120回前後で一見すると正常の脈に間違えるような紛らわしい異所性心房頻拍もあるのです。こうした不整脈のトリックにだまされないでカテーテルアブレーションで治すことが大事です。

22歳の女性です。ストレスはあるもののやりがいのある職場でバリバリ頑張っていたのですが、ある頃から会議中などで普段より動悸(どうき)が強く、プレゼン時などで激しくなるのに気づくようになり来院されました。「就職して緊張しているからドキドキするのかと思ってましたが、なんか変なんです」と言います。脈は緊張などで速くなる感じで、テレビを見ていて急に速くなることもあったようです。

外来受診の心電図は正常でした。動悸の時でもスマートウオッチでは確かに正常波形に見えるようです。24時間ホルター心電図検査で心拍の1拍1拍丁寧に調べてみました。よくよくみると、ある時刻から洞結節の心電図波形が若干変わっていることがわかったのです。彼女の脈が乗っ取られました。今風に言うと「背乗りの脈」でしょうか。