医学の進歩は日進月歩です。特に心臓病に対するカテーテル治療の進歩は著しく、40年前には心臓血管外科でしか治せなかった心筋梗塞など虚血性心臓病が治せるようになりました。不整脈でも、虚血性に遅れること数年で治療法が発見されました。全くの偶然からでした。

1982年、米国での不整脈のカテーテル検査中でのことです。ギャラガー先生が心臓の電気の司令塔である刺激伝導系を調べるために使ったカテーテルの先に、誤って直流電気ショックが流れ込んでしまいました。医療事故でしたが、カテーテルの先端に流れた強い電気がその部分の流れを遮断したのです。けがの功名でした。

カテーテルの先端からの直流通電で不整脈の電気の流れを止める。これを利用して、直流通電法といわれる初期のアブレーションが始まり、日本にも広がりました。当時、私は国立循環器病センター心臓内科レジデント(研修医)でした。リスクと裏腹のこの方法は1回のみの通電しか許されないため、レジデントの間では「波動砲」と呼んでいたほどです。1985年には高周波通電法が登場し、さらにカテーテルの改良などを経て現在に至るまでアブレーション治療の主流となっています。

高周波とはアマチュア無線と同じものです。治療用カテーテルの先端に高周波電流を流すと電気エネルギーは熱エネルギーに変換できるので、温度をコントロールができます。非常に扱いやすい方法ですが予期せぬ温度上昇が起こると、カテーテルの先端と心筋の間でポップコーンが跳ねるような現象が起こってしまうので注意を要します。高周波ではリスクはかなり軽減されましたが十分な経験値と安全管理が必要です。

そして昨年、熱を使わない新しい治療法が日本で認可されました。高電圧を使ったパルスフィールドアブレーションです。