「加齢性難聴」が進行し、聞こえがどんどん悪くなると、まずは「補聴器療法」で対応します。その補聴器で聞こえの改善が得られない、という人はいます。このような高度重度難聴の方の多くは、耳の一番奥にある内耳の障害で難聴が起こっているので、「人工内耳」で対応することになります。
内耳は空気振動である音を電気信号に変換している器官。この電気信号を神経が受け取って脳に伝えます。脳は電気信号でないと音を感じ取ることができません。その内耳で電気信号に変わらないというのが、聞こえない大きな原因になっていると考えられます。
この状態に対して、音を電気信号に変換して直接神経に届ける装置を作れば聞こえるようになるのでは、というコンセプトで開発されたのが、補聴器で効果が不十分な人が適応となる「人工内耳」です。
これは、“耳に電気を流せば音が聞こえる”というコンセプトです。1900年頃に電池で有名なボルタさんが見つけたといわれています。そこから実際に開発が進み、「体の中に安全に留置できる」「長期間故障しない」「何より言葉が聞き取れるようになる」など、さまざまな高いハードルをクリアして進んだのです。そして、現在の形に出来上がったのが1980年代前半です。
この人工内耳は、人工感覚器と言えるものです。いろんな感覚を代用する機器が開発され使われています。嗅覚、味覚など、いろんな感覚があります。その中でも、最もうまく使えるようになって成功している人工感覚器は人工内耳、と言われています。その人工内耳の詳細は次回からです。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

