「加齢性難聴」が進行し、補聴器で対応できなくなると、自分で声を聴く最終段階の「人工内耳」になります。その人工内耳の適応基準は、次のようになっています。

<1>聞こえが90dB(デシベル)以上の重度難聴の人

重度難聴の人が適応です。ただ、聞こえが70~90dBの高度難聴の段階からチェックする必要があります。この段階では補聴器で聞き取れる人もいれば、補聴器では十分に聞こえない人もいます。そこで、語音聴取検査で語音明瞭度を測定して、最高語音明瞭度が50%以下の場合は人工内耳に、という判断になっています。90dB以上だけではありません。

<2>疾患などがいろいろある人などは慎重にーー

「人工内耳を入れる場所がない」、「中耳炎がある」、「内耳の奥の神経が明らかに機能していない」、「聴神経腫瘍などの腫瘍がある」といった人は慎重に対応すべき、と言われています。聴神経腫瘍の人に人工内耳を行っている施設もあります。が、効果には限界があります。受ける人は、その点を十分納得して手術を受けてください。

この2点が、人工内耳の主な適応基準です。この基準に従って行えば、人工内耳は保険適応です。両耳の人工内耳手術も可能です。手術費は、自費で約400万円ですが、3割負担であれば120万円。ただ、日本の場合は高額療養費制度がありますので、低所得者では3万~5万円、最も収入の多い人でも25万~30万円で受けることができるので、大丈夫です。

人工内耳の手術を受けている人数は、2014~23年までのデータでは、年間約1000件から約1400件へと右肩上がり。ただ、この数字は小児を含めた件数なので、成人だけではこの数字の約65%、約910人です。海外と人口との比率でみると、100万人当たりドイツは21件、スイスは31件、イギリスは15件、日本は7件に届かない状況です。海外でこれだけ人工内耳が使われているのは、「補聴器よりもクオリティーが上がる」と受け止めている人が多いからです。日本でももっと使う人が増えることを願っています。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)