「周術期治療」をご存じでしょうか。術前、術中、術後を合わせた一連の流れを周術期と言います。従来行われていた周術期治療のケースを紹介します。

「手術をし、リンパ節転移がありました。腫瘍(しゅよう)は大きかった」。このような場合には術後に抗がん剤治療を行っていました。特にリンパ節転移のあった症例には、化学療法を行うだけではなく、放射線化学療法を行う場合もありました。従来は、このように肺がんの治療は行われていました。ところが、「3センチ以上の肺がんで、リンパ節転移がなくても抗がん剤治療を行うと、術後の成績が良い」との発表があり、それが世界的に認められたのです。それを受けて、リンパ節転移がなくても術後に抗がん剤が使われてきました。

そして、ここにきて大きな変化が--。術後、がん細胞の遺伝子を調べる検査を行って遺伝子変異(EGFR陽性)があった場合は、抗がん剤ではなく「分子標的薬」を使うことになったのです。分子標的薬は前回紹介したように、がん細胞特有のタンパク質や遺伝子をターゲットにする薬。この分子標的薬(EGFR阻害薬)を肺がんが2期以上であれば3年間服用することになりました。

また、分子標的薬のEGFR阻害薬のほかに、ALK阻害薬もあります。この薬が適用になるのはALK融合遺伝子陽性の人で、この場合は2年間服用になります。

分子標的薬を2、3年間服用するのは大変ですが、服用の最初だけ入院してスタートし、あとは定期的に外来通院です。仕事に関しては行えます。ただ、副作用として生死にかかわる「間質性肺炎」もあるので、その副作用には十分な対応を行っています。

このような周術期治療の進歩により、再発の芽をしっかりつむことができるようになってきています。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)