山本光学は1911年の創業以来、長年培ってきた光学技術をもとに、サングラスやゴーグルなどの企画開発から製造販売まで行っています。来年の東京オリンピック(五輪)へ向けて女子マラソン代表の前田穂南選手や、12年ロンドン五輪アーチェリー銀メダリストの古川高晴選手らトップ選手に競技用サングラスを提供しています。

前田選手のサングラスはテンプル(つる)がグラス部分の下から出る『逆テンプル』で、重心が低く超軽量でもズレにくい。古川選手のものは70メートル先の的がくっきり見える「ウルトラレンズ」を使用しています。選手が試合で最大限の力を発揮できるように、開発からチームでサポートしています。

弊社のスポーツとの関わりは72年の札幌五輪の前後から。曇らないスキーゴーグルを開発してウインタースポーツ市場に本格参入しました。80~90年代には悪天候でも明るく見えるレンズが好評で、米国やスイスなどの強豪国やアルペンスキー金メダリストのオーモット選手(ノルウェー)らと契約していました。

私は82年の入社です。当時、日本はスキーブームで販売も好調でした。営業を担当した後は開発責任者になりました。一番印象に残っているのは98年長野五輪。白馬エリアでサポートセンターを設置するなど、選手サポートと一体となった仕事に大きなやりがいを感じました。

サングラスはなかなかスポーツ市場に受け入れられませんでした。転機は92年バルセロナ五輪です。女子マラソンで有森裕子選手が弊社のサングラスを着用して銀メダルを獲得。フレームを廃し軽量化したざんしんなデザインは、まぶしさを防ぐという用途からスポーツ用に進化したもので、一般ユーザーにも広く定着しました。

04年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずき選手のサングラスは、社内チームをつくり、石こうで顔型をとって製作しました。野口選手はゴール直前まで外さず、ゴール後はサングラスにキスをしました。現地で陣頭指揮を執った今の山本社長をはじめ、社員一同本当に感動しましたし、励みになりました。

パラリンピックのゴールボールのアイシェードや競泳の視覚障害者のゴーグルも開発製造しています。選手に要望を聞くと「かっこいいものを」。競技をかっこよく見せたいという強い思いを感じました。機能性とともにそういう要望にもしっかりと応えていきたい。いろんな選手と一緒に開発することで、私たちの技術力も磨かれていくのだと思っています。(324人目)