柔道女子でオリンピック(五輪)5大会連続メダル獲得の谷亮子さん(48)が30日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で行われている全日本合宿を訪れ、講話した。

引退後、日本代表に金言を授けるのは「初めてです」と満面の笑み。当初は21年東京五輪の前に要請があったものの、新型コロナ禍で持ち越されていた夢プランが、フランス大使館で3月に行われた日仏女子柔道交流イベントを契機にようやく実現したという。

48キロ級では自身以来20年ぶりの五輪制覇が期待される角田夏実(31=SBC湘南美容クリニック)や52キロ級で2連覇を目指す阿部詩(23=パーク24)ら、パリ五輪や世界選手権の代表に選ばれて日の丸の系譜を継いでいる後輩たちに1時間ほど「田村」「谷」「ママ」で世界一になった経験を伝授。「乱取り5分×15本×2セット」など現代では考えられないような練習量に、令和の最強女子柔道家たちが、どよめく場面もあった。

質疑応答でも包み隠すことは一切なし。同郷福岡の東京五輪78キロ超級女王、素根輝(23=パーク24)から「頂点に立った後の苦悩と次への向かい方」を尋ねられると「初めて明かします」と神対応。表彰台に立つたび、その場で次の目標を思い浮かべることが息の長い活躍の極意と紹介した。

世界選手権7連覇や全日本選抜体重別で14度の優勝など「レベルが違い過ぎる遠い存在」(角田)と、異次元の成績を残してきた谷さん。金言はとどまるところを知らなかった。

「朝、起きて顔を洗うところから五輪と同じ流れを想定した1日を設けるといいですよ」

「(連勝街道を歩んだ現役時代は研究され尽くし)前の大会で使った技は効かなくなる。相手によって20通りから30通りの倒し方を持っておいた方がいいですよ」

「フランスの選手と戦う前はフランスパン。イタリア選手の前はパスタ。食事から相手を食べる。おいしいですよ」

一方で「寝られない夜もあった」と打ち明けるなど魅力あふれる柔道人生の逸話を語って「YAWARAちゃん」の世界に引き込んだ。

最後は、あと12週と3日後に開幕が迫ったパリ五輪の代表勢に「パリで金、やっパリ金!」とエールを送り、記念撮影攻め。16歳で初出場したバルセロナ五輪を皮切りに、金2銀2銅1のメダルを手にしたレジェンドとの初めての交流に、花の都で兄一二三(26=パーク24)との史上初「兄妹V2」を目指す詩も驚くことばかり。「私なんて赤ちゃんに見える。五輪1、2回でくたばっちゃいけないなと思いました。やっパリ金!」と触発されていた。【木下淳】