フィギュアスケート男子で66年ぶりの連覇を達成した羽生結弦(23=ANA)が、20年東京オリンピック(五輪)へ金メダルのバトンを託した。25日、各種目上位選手らによるエキシビションの大トリを務め、閉会式にも参加。激動の五輪に別れを告げた。昨年11月の右足首負傷を乗り越えて金メダルを獲得した、逆境に負けない生きざまは、東京を目指す選手に引き継がれる。

 フィギュアを締めるエキシビションの大トリで羽生が舞った。白い羽のついた華麗な衣装で演じたのは白鳥の姿。鳥のように軽やかな滑りと美しいスピンで、会場全体を引き込んだ。昨年11月に痛めた右足首には痛みが残る。それでも痛み止めの薬を飲み、金メダリストとしての大役を果たした。「ありがとうございました」と何度も口にし、最後は名残惜しそうに氷をなで、五輪のリンクを去った。

 その後の閉会式では笑顔をまじえ、手を振り歩いた。湧き上がるのは、金メダルの重みと感謝の思い。「今までの人生の中で、一番幸せな瞬間をいただきました。ただ前を向き、頂点だけを見て過ごしてきた日々がすべて報われたと思います。アスリートの1人として、この金メダルに誇りを感じています」。連覇という最大の目標を達成し、充実感で満ちていた。

 心に刻まれている言葉がある。「連覇じゃなく、1回の優勝のほうが楽だった」。16年リオデジャネイロ五輪の体操男子個人総合で2連覇を達成した内村航平が発したものだ。体操界で「キング」と呼ばれる内村でさえ、連覇には重圧がのしかかり、それを乗り越えるためのたゆまぬ努力があった。それを知り、心を燃やした。氷上で本格的な練習を再開した今年1月。まだ1回転しか跳べなかったが、周囲には「僕はどんなことがあってもやる。絶対に勝つ」と宣言した。勝利への強い思いが連覇につながった。

 羽生が内村に刺激を受けたように、今回の羽生の演技は、20年東京五輪を目指す選手を刺激した。同じく連覇を狙う競泳の萩野公介(23)は「ケガをした中で100%を出し切って、感動した。自分も頑張っていきたい」。同じ仙台出身の卓球・張本智和(14)も「自分ももっともっとがんばらなきゃ」と奮い立った。羽生から東京へ-。思いは確かに引き継がれた。【高場泉穂】