日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(63)が14日、都内で就任1年を振り返る会見を行った。昨年6月に竹田恒和前会長の退任を受けて、新会長に就任。昨年12月のマラソン札幌移転、3月には新型コロナウイルス感染拡大に伴う五輪そのものの延期と激動の1年となった。

山下会長は、来夏の五輪について「スポーツ、五輪どころではないという声も多く聞かれる。オリンピック、パラリンピックやめたほうがいいよ、という声もある中で、成すべきことに集中したい。誰もこの先を予測できない。1カ月、3カ月、半年後を論ずることは控えたい。安心、安全な大会のために。強い意思のもと、ひたむきに五輪を目指す。アスリートを全力でサポートしたい。スポーツでよりよい社会に寄与する。やれることは限られているが、アスリートに寄り添って声を聞きたいと思う」と口にした。

JOCは2月に金メダル30個など東京五輪で果たすべきものを「GOAL & ACTION FOR TOKYO 2020」として発表した。山下会長はこの日「五輪を取りまく環境は変化した。五輪のコンセプトも大きく変わっている。ポストコロナの五輪にふさわしいコンセプトにしたい」とその変更を口にした。金メダル30個の目標を変えないが「五輪はこれまで国家の威信をかけた、華やかで豪華なものだった。華美なものから、大きく姿を変えるべきであると思っています」と簡素化の方向性を示した。

その上で、五輪金メダリストでもある山下会長にとって、五輪に最低限、必要なものを聞かれて「世界中のトップアスリートが集うこと、最高のパフォーマンスを発揮できる環境があること。この2つは私からみたら欠かすことはできない。そのためには安心、安全がないと難しいと思います」と、五輪の根本である競技を尊ぶ考えを示した。

昨年6月の就任から1年。率直な感想を聞かれると「私はあまり賢くないので、本音しかしゃべれない」と冗談めかした上で「ホスト国の会長が1年前に替わる。あっちゃいけないよなあと思ってました。未知の経験ばかりでした。得難い経験をさせてもらった」と苦笑いした。【益田一弘】