今夏、日本代表MF久保建英(18)が東京からスペインの名門レアル・マドリードに完全移籍した。日本サッカー界に衝撃を与えた1年もあとわずか。J3のFC東京U-23(23歳以下)取材で12月8日、駒沢陸上競技場へと向かった。ガンバ大阪U-23に4-1で快勝し、東京の今季が終わった。

16年11月5日、15歳だった久保がJリーグで初めてプレーしたのが、同じJ3で駒沢だった。前半は相手の長野に押し込まれ、人のいない敵陣は鳥がピッチを散策するほど静か。後半から出場した久保は周囲よりひと回り小さな体で、ピッチを無尽に走っていた。

試合後、率直に振り返った。「パスのスピードや展開が速くて、最初は全然ついていけなくて。あたふたしちゃう場面もあった。まだまだ劣っている。自己評価は20点か15点」。最後は「大切なのは貪欲な気持ち。上には上がいる。自分はまだまだ下。どんどん追い越していけるようにという気持ちで毎日やっている」と締めくくられた。

あれから約3年、今やA代表に定着する。マジョルカへ期限付き移籍し、今月7日には下部組織時代を過ごしたバルセロナのホーム「カンプ・ノウ」のピッチに立った。そして後半7分、切れのいいドリブルでFWメッシの股を抜いた。

「自分は仕掛けることで違いを生む選手だと思っている」。信念は揺らがない。

今夏、Rマドリードのトップチームの一員として7月の北米遠征に参加。実戦デビューしたバイエルン・ミュンヘン戦、FWビニシウスに針穴を通すようなスルーパスを出した。試合後、各国から集まったテレビカメラとICレコーダーが久保に向いた。沈着で明晰(めいせき)な久保が少し早口だった。

久保 試合前は、雰囲気を感じて。時間がたつにつれて、現実になってきたというか。

日本人がプレーすることが想像もできなかったRマドリード。ユニホームに袖を通した者だけに押し寄せる言いようのない感情に包まれていた。

16歳のときに残した言葉がある。「後悔しないこと。『あのときやっとけばよかった』みたいなのは絶対にあっちゃいけない。逃げずに向き合って『相手に負けてない』と試合の後に感じたい」。バルサが相手でも姿勢は貫かれた。

「上には…」と表現したあの日から、どれだけ追い越してきたのだろうか。18歳の視線は変わらず、上を向いている。【岡崎悠利】