世界の40を超える国と地域でスポーツを通じた社会貢献活動に取り組んでいるローレウス財団(本部ロンドン)が、2日までにローレウス・アンバサダー(大使)で、ギリシャ1部の強豪PAOK入りした元日本代表MF香川真司へのインタビューを行った。

香川は2017年からローレウス・アンバサダーを務めている。世界中の200人超の現役アスリートらによって構成され、スポーツを通じた社会貢献活動に取り組む同財団の活動を支援している。

香川は、スポーツの力やスポーツを通した社会貢献活動、これまで所属したチームの監督やチームメートとの出会い、そして新天地ギリシャについてなど、大いに語っている。

インタビューの第2回は、サッカーを中心に、世界屈指の名将や、チームメートについて語っている。

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-ドルトムント時代の指揮官、ユルゲン・クロップ監督との思い出や彼の印象を教えてください。香川選手の成長過程において、クロップ監督はどのような存在でしたか

香川 ひと言で監督のことを表現するなら、選手への愛がある人です。常に選手のことを考えて、自分たち選手がピッチで戦う上で、大事な場面では常にサポートしてくれて、自分たちも何の迷いもなくピッチに出ることができました。あの監督について行けば恐れることは何もないと思わせてくれる、そういう存在でした。ヨーロッパに出て、1年目にブンデスリーガで優勝、2年目でまた優勝。サッカーではまだまだ評価の低いアジアの国から、ヨーロッパというトップレベルでプレーし、優勝を勝ち取ることができたというのは、今振り返ると運命的な出会いだなと感じます。ただ、当時は勢いといいますか、挫折を経験していなかったので、もっとやれるという自信しかなかったです。そのあとのキャリアで、甘くない世界であるということはたくさん経験しましたが、当時はそれくらいの勢いで次のステップに行きたいという気持ちしかなかったです。クロップ監督やドルトムントと出会い、あのスタジアムでプレーできたことは、自分にとって本当に幸せな事だったなと感じます。

-マンチェスター・ユナイテッド時代の指揮官、アレックス・ファーガソン監督の印象を教えてください

香川 “サー・アレックス・ファーガソン”は誰もが知る監督で、誰もがリスペクトする監督だったので、そんな名将の下でプレーできるチャンスがあると聞いた時には迷いはなかったです。移籍する前にマンチェスターのホテルでお会いした時は、そのオーラや人柄に圧倒されました。存在感は思っていた以上で、当時70歳くらいでしたが、断然若く感じ、背筋もピンと立っていて、身長も高く、その時の印象が強く残っています。結局1年しか監督とは過ごせなかったですが、監督“サー・アレックス”がハーフタイムに怒鳴っているときに、ウェイン・ルーニーやライアン・ギグス、ポール・スコールズが何も言い返せないのを見て、この人はとても偉大な人なのだなと感じました。彼は私たち若手よりも、経験ある選手に対して強い要求をしていたイメージがあり、チームをまとめ上げる際に、彼はこういうマネジメントをするのだなと印象深く残っています。ハーフタイムで怒鳴り散らかして顔が真っ赤になるという有名な話は、本当だったのだなと体感しました(笑い)。ファーガソン監督だからこそやれることなのだと思います。

-マンチェスター・ユナイテッド時代のチームメート、ウェイン・ルーニー氏との思い出を教えてくだ

さい

香川 ユナイテッドに入って一番誰とプレーしたいかと言われたら、ウェイン・ルーニーでした。ただ、すごくやんちゃでクレイジーなイメージがあったので、最初はどういう人なのか分からなかったです。でも、ピッチで一緒に練習していくなかで、誰よりも戦っていたし、誰よりもチームメートを大事にしていて、まさにチームプレーヤーみたいなものを彼からは感じました。ユナイテッドでたくさんの素晴らしいプレーヤーとプレーしましたが、ウェイン・ルーニーはベストな選手であったと今でも感じます。一緒にプレーできたことは自分のキャリアにとって、素晴らしい経験でした。

-ウェイン・ルーニー氏は今後指揮官としてどのような活躍を見せると期待しますか

香川 世界トップのリーグなので、結果がすぐに出なければ、監督が先に首を切られてしまうため、予想はなかなか難しいです。ただ、いずれユナイテッドを率いて欲しいと思っています。彼は間違いなくそれだけのパーソナリティーと実績、経験を持っていると思います。現役時代に一緒にプレーをしたスティーブン・ジェラードやフランク・ランパード、ライアン・ギグスなど、彼らが今後プレミアリーグのチームの監督として見られる日が近づいているということは非常に楽しみです。ルーニーは、近い将来必ず(監督として)プレミアリーグのチームで、またサクセスストーリーを作っていくと思います。(続く)

香川真司大いに語る/ローレウスのインタビュー上

香川真司大いに語る/ローレウスのインタビュー下

◆ローレウス財団 2000年設立。「スポーツの力を持って社会問題に立ち向かい、スポーツの素晴らしさを世の中に広めること」を目的に、スポーツを通じた社会貢献活動に取り組む国際組織で、世界40カ国で活動などを展開。さまざまな競技の伝説的選手がメンバーに名前を連ねており、「世界スポーツ賞」の授賞式は「スポーツ界のアカデミー賞」とも称される。日本では内村航平、香川真司、杉山愛さんがアンバサダー。18年には大坂なおみが年間最優秀成長選手賞に輝いた。日本人初の受賞だった。