世界の40を超える国と地域でスポーツを通じた社会貢献活動に取り組んでいるローレウス財団(本部ロンドン)が、2日までにローレウス・アンバサダー(大使)で、ギリシャ1部の強豪PAOK入りした元日本代表MF香川真司へのインタビューを行った。

香川は2017年からローレウス・アンバサダーを務めている。世界中の200人超の現役アスリートらによって構成され、スポーツを通じた社会貢献活動に取り組む同財団の活動を支援している。

香川は、スポーツの力やスポーツを通した社会貢献活動、これまで所属したチームの監督やチームメートとの出会い、そして新天地ギリシャについてなど、大いに語っている。

第1回は、スポーツの力、社会貢献などについて、しっかり持論を述べている。

   ◇   ◇   ◇

-スポーツを通じてどのような社会貢献ができると思いますか

香川 現役選手でいる間に、サッカー以外の活動をするのはなかなか難しいですが、自分自身、30歳を超えて、15年くらいプロとしてのキャリアを重ねている中で、まずは自分のできることからやっていければいいかなと思うようになりました。シーズンオフが年に1回、しかも2~3週間くらいしかないので、実際に会える機会を頻繁にというわけにはいきませんが、継続して実施続けていくことに意味があると感じています。

-イベント開催や子供たちとの交流を通して、気付いたことや感じたことは何ですか

香川 イベントを行うたびに子供たちから逆にパワーをもらっていると感じます。普段ヨーロッパにいて、日本の子供たちとサッカーをする機会がなかなか設けられないので、一緒に触れ合えることは楽しさしかないです。たったの1~2時間程度なので、子供たちにとってどれほど意味があるものかということは分からないですが、その瞬間の楽しさはもちろん、1カ月後でも1年後でも、ふとした時にこのイベントが何かの気付きになってくれたらいいなと思っています。「今」ではなく「その先」の刺激になったり、いろいろなことを思い出させてくれたりする、そんな機会を1人でも多くの子供たちに提供できればいいなと思います。

-「スポーツの力」を感じた瞬間はありますか

香川 ワールドカップ(W杯)は「日本全体が1つになれる瞬間」を感じやすい場面かなと思います。また、ここ数年日本では2011年の東日本大震災を含め、大きな自然災害が起きています。その中で、2011年になでしこジャパンがワールドカップ優勝を果たした時や、カズさん(三浦知良)がチャリティーマッチでゴールを決めた瞬間など、当時私はドイツにいてテレビで見ていたのですが、感じるものや心を動かされるものがありました。スポーツを通じて国民に与えられるものがこんなにあるのだと感じられる瞬間でした。

-「ローレウス・スポーツ・フォー・グッド」のように、スポーツの力を使った社会貢献活動が日本で広がっていくことについてどのように思いますか

香川 非常に大事なことだと感じています。ヨーロッパでサッカーをしていると、それをより身近に感じられます。ヨーロッパでは、サッカー選手やスポーツ選手が国民に与える影響力や発信力はとても強いですが、日本ではスポーツ文化というものがまだまだ根付いていないと感じます。日本では芸能人やアーティストなどいろいろなジャンルの方々が活躍していて、彼らの影響力が強いですが、私はスポーツ選手もそういう立場になれる存在だと信じています。国民や子供たちに向けて発信できるものを考えながら、取り組んでいく必要性を感じます。

-コロナ禍でさまざまな支援をされていましたが、アクションを起こすきっかけは何だったのでしょうか

香川 昨年のコロナ禍では、スペインのサラゴサ市にいたので、まずはこの街に対して何かできることがないか、クラブのスタッフと話しました。その中で、高齢者に食事を届けるサービスの手伝いが必要だと聞いたので、そこへ寄付させていただきました。何か自分もアクション起こしたい、自分でできることを考えてやりたいという思いがあり、自分でできるベストを考えて行動しました。今後も自分ができる範囲の中でのベストを尽くしていくことで、そういった1人1人の力が大きな力になると思っています。1人でやっても微々たるものでしかないですが、それがみんなに伝わっていけば大きな力になっていくと思っています。特に私のようなアスリートが行動を起こすことによって、日本や世界中の人々に与える影響は大きいはずです。(続く)

香川真司大いに語る/ローレウスのインタビュー中

香川真司大いに語る/ローレウスのインタビュー下

◆ローレウス財団 2000年設立。「スポーツの力を持って社会問題に立ち向かい、スポーツの素晴らしさを世の中に広めること」を目的に、スポーツを通じた社会貢献活動に取り組む国際組織で、世界40カ国で活動などを展開。さまざまな競技の伝説的選手がメンバーに名前を連ねており、「世界スポーツ賞」の授賞式は「スポーツ界のアカデミー賞」とも称される。日本では内村航平、香川真司、杉山愛さんがアンバサダー。18年には大坂なおみが年間最優秀成長選手賞に輝いた。日本人初の受賞だった。