国際オリンピック委員会(IOC)が東京オリンピック(五輪)でマラソン、競歩の札幌開催の検討を始めた背景には、同じ高温多湿のドーハで9~10月に行われた世界選手権で棄権者が続出し、強い批判を浴びたことがある。号砲時間はマラソンが深夜11時59分、競歩は同11時30分。選手は急きょ、錠剤型の体温計を飲み、深部体温を計測される事態だった。

女子マラソンはスタート時、気温32度、湿度74%。68人中、途中棄権は28人で完走率が60%を割ったのは大会初。7位の谷本を指導する天満屋の武冨監督は「2度とこういうレースは走らせたくない。昼やっていたら死人が出たのでは」と非難した。

スタート時気温31度、湿度74%の男子50キロ競歩も完歩率は約61%。前回大会覇者、リオ五輪王者も含め、46人中18人が棄権。金メダルの鈴木も「50キロ持つか不安だった」と話し、東京五輪のコース変更を訴えた。「地獄だった」と表現した選手もおり、五輪への懸念が深まっていた。

ただ、コース設定から仕切り直しとなると、陸上関係者からは「非現実的。1年を切った段階では厳しい」との声が上がる。札幌市では夏に北海道マラソンを開催しているが、運営面での準備期間は明らかに足りない。