6連覇を狙った高橋英輝(27=富士通)は1時間19分53秒の3位だった。「レースを進めるのは難しかったですが、勝敗とは関係ない。自分の歩きが悪かった。自分がダメでした」と言い訳しなかったが、運営のミスによる反則数の“誤掲示”で、心理的不利を受けたのも事実だった。

約8キロから15キロ地点の間、選手に反則の数を知らせる掲示盤に、高橋の反則は2つと記させていた。しかし、実際は1度しか反則を取られていなかった。

20キロ競歩は3回の反則で、2分間待機の罰則を受ける。そうなれば、優勝争いから脱落する。だから反則を取られないように、慎重に歩かざるをえなくなった。高橋も2分間待機の罰則の危険性があると思いながら、歩いていた。思い切ったスピードの勝負を仕掛けづらくなっていた。

発覚したのは15キロ地点。優勝した山西との一騎打ちを展開していた高橋は「ベントニー(接地で膝が曲がる)」の反則を取られた。実際は2つの反則だが、掲示板には3つ目がカウントされた。2分間の待機場に入らないといけないはずが、審判員に止められることなく、通過した。高橋は「途中で(3つ目の反則が)付き、でも消えたので、混乱しながら歩いていました」と振り返る。

異変に気付いた別のスタッフからの指摘で、掲示板に表示されている反則数が異なることが発覚した。大会関係者によると、8キロ地点で掲示板に新たに追加された「ロス・オブ・コンタクト(両足が同時に浮く)」カウントされた反則は、実際はなかったという。

原因は人為的ミスによるもの。競技規則を担当する藤崎明さん(61)は「心理的負担をかけていたことは間違いない。正しく掲示されているかの確認を怠っていた。防ぐこともできた。高橋選手には大変申し訳ない」と謝罪した。前回大会までは2キロの往復コースだったが、今大会からは世界大会で一般的な1キロの往復コースとなった。審判が選手を判定する回数も増え、レース全体の反則数が増えて、スタッフの負担が大きくなってしまったこともミスが起こった背景にはあるという。

結果的に高橋は18キロ地点で再び「ロス・オブ・コンタクト」の判定を受け、2分間待機の罰則になった。高橋は「これが結果」とうなだれた。その上で、東京オリンピック(五輪)の最終選考会では全日本競歩能美大会(3月15日)へ向けて「チャンスはあるので頑張りたい。今日のレースを反省し、何がいけなかったのか考え、臨みたい」と話した。