開幕まであと約1カ月。私たち女子プロも準備のオフを過ごしています。春を待つ間に、何か1つ、徹底的に身に付けてみるのはどうでしょう? 元プロ野球中日監督・谷繁元信さん(49)との対決も4ホール目。今週のテーマは、アドレスも含めた再現性を高めることです。

4ホール目、ベタピンで余裕のピースサイン
4ホール目、ベタピンで余裕のピースサイン

谷繁さんほどゴルフがうまい方でも、1度、トラブル脱出に失敗すると、そこからどうしても無理をして泥沼に陥ることがまま、あります。「普段なら無理をしないところだけど、マッチプレーだから無理して攻めたんだよ」と後からおっしゃっていましたが、ストロークプレーとマッチプレーの大きな違いもありますね。

コースマネジメントで無理をするということ以外にも、そういう状態になると、スイングそのものもいつもとは違うものになってしまいがちです。テンポが速くなって、バックスイングが浅くなったり、ボールを上げようとして、インパクトがうまくいかなかったり。練習で再現性を高めるのがスポーツの技術向上と言い換えることもできます。中でも、相手に反応するのではなくその場の状況に応じて自らボールを打つゴルフでは、特にその傾向が強いと言っていいでしょう。

「野球でもそうだけど、いつもと同じテークバックをしているつもりなのに、映像を見たらできていないということがある。競技ゴルフを始めてから、試合に向けてテーマを決めて調整しているんだけど。試合になるとうまくいかない。アマチュアでもうまい人はラウンドしながら上手にスコアメークしているのに」と、しみじみ口にする谷繁さん。その気持ちはよくわかります。

無理がたたって林から脱出できなかった谷繁さん
無理がたたって林から脱出できなかった谷繁さん

一番難しいのは、アドレスの向きでしょうか。特にアマチュアの方は1度、後ろからターゲットを見てから構えるのに、実際にアドレスすると全然右を向いていることが少なくありません。それぞれ立ちづらいホール、相性のいいホールがあって、地面にラインを引ければいいのですが、ルールでそれはできない。イメージを描いてきちんと立つのが基本中の基本です。

試合に臨む私たちは、練習ラウンドをして、本番も3ラウンドか4ラウンドあります。その中で上手に対処しながら、それでも立ちにくいホールはムリをしないようにしています。コツとしては、絶対に打ってはいけない方向を片側意識から消してしまうのがわかりやすいです。安全な方に曲げる球が打てれば、大きなミスにはつながらないからです。

少し高度な技になりますが、アドレスも含めた再現性を高めることを念頭に置いてプレーしてみてください。

◆青木瀬令奈(あおき・せれな)1993年(平5)2月8日生まれ、群馬県前橋市出身。2006年日刊アマ全日本女子に史上最年少の13歳で優勝。数々の実績をアマ時代に残す。11年にプロ転向。17年ヨネックスレディースで初優勝。19年賞金ランキング35位。三和シヤッター工業所属。身長153センチ。

◆谷繁元信(たにしげ・もとのぶ)1970年(昭45)12月21日、広島県生まれ。強肩捕手として島根・江の川(現石見智翠館)からドラフト1位で横浜(現DeNA)入団。98年の日本一に貢献し、01年オフにFAで中日移籍。リーグ優勝5度、日本一2度。3021試合出場のプロ野球記録を持つ。現役時代は176センチ、81キロ。ゴルフのベストスコアは69。


取材・構成 遠藤淳子

撮影 浅見桂子

協力 葛城GC(静岡・袋井市)