フィギュアスケート4大陸選手権(ソウル)閉幕から一夜明けた10日、10年バンクーバー五輪代表の小塚崇彦氏(30)が男子初優勝を果たした羽生結弦(25=ANA)の現状を分析した。

3月の世界選手権(カナダ・モントリオール)では3連覇を目指すネーサン・チェン(20=米国)と競演。世界王者への返り咲きへ、大切になる要素を語った。【構成=松本航】

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世界最高得点を更新したショートプログラム(SP)と、羽生自らが「まだ滑り込めていない」と語ったフリー。演技を見た小塚氏は、昨年12月の全日本選手権からの進化を口にした。

小塚氏 1本1本のジャンプにキレが出たと思います。体の軸が「キリキリッ」と回るような感じ。フリーの(着氷時に手をついた)4回転ルッツなど、羽生選手自身も理想と比べて「まだ足りない」と思っているでしょう。ただ、質は確実に上がっている。野球に例えると、投手の肩が出来上がった状態のようです。

フィギュアスケートの個人種目を、9人で戦う野球と重ねた。例えば直球やカーブ、スライダーを、ルッツやサルコー、トーループといった4回転ジャンプに置き換える。キレは抜群。世界選手権で頂点に立つための必須要素を得た。では、残りの約1カ月間、高めていくべきものは何か-。

小塚氏 捕手に求められる要素でしょう。スケートは、1人で投手も捕手もやらないといけない。野球も全部が直球では勝てない。質の良い球(ジャンプ)を、どうまとめていって勝つのか。仕上げの作業です。

昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルは、優勝したチェン(米国)と43・87点差。今年1月の全米選手権で4連覇したライバルは、国際スケート連盟非公認ながら合計330・17点と安定感がある。一方で、羽生の背中をプログラムが押す。年明けにSPを「バラード第1番」、フリーを「SEIMEI」に変更。18年平昌で五輪2連覇の演目だ。小塚氏は今大会の演技を見て、両演目で3連覇した15年GPファイナル(旧ルール世界最高の合計330・43点)を思い返した。

小塚氏 あの時のような雰囲気が見え始めた。「勝てる」という自信があり、リズム、タイミング、スケート技術と曲がシンクロしている。今後、大切なのはイメージ。全体をまとめて、完成度を高めきった先に、頂点が見えるでしょう。