◇2000シドニー大会柔道男子100キロ超級決勝 ドイエ(フランス) 優勢 篠原信一(日本)

「世紀の誤審」は、開始1分35秒に起こった。内股透かしを決めてガッツポーズの篠原。しかし、主審の判定は篠原の一本ではなく、ドイエの有効だった。山下泰裕監督や斉藤仁コーチの抗議にも判定が覆ることはなく、絶対的な金メダル候補は銀メダルに終わった。「弱いから負けた。それだけです」の言葉は、あまりにも痛々しかった。

 後日、国際柔道連盟は誤審を認めたが「両者ポイントなし」というグレーなもの。篠原が後に悔いたのは「なぜ、気持ちを切り替えて相手を投げようと思えなかったのか」だった。強い気持ちがあれば、誤審に影響されず攻めることができた―と。その発言もまた、柔道家らしい潔さだった。(2014年10月29日東京本社版掲載)