オリンピック(五輪)選手の虎の穴に「潜入」する最終回は、五輪初採用となった自転車BMXフリースタイル・パーク男子で金メダルを目指す中村輪夢(りむ、19=ウイングアーク1st)の専用パーク。20年1月、京都・宇治市に総工費約4億円をかけてオープンした。今回は「3つのナゾ」をひもときながら、ベールに包まれた“秘密基地”をリポートする。【取材・構成=松本航】
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■ナゾ(1)京都・宇治市の山奥
世界遺産の平等院で知られる京都・宇治市。市街地から外れた山道を進むと、白の建物が目に入った。第一印象は「でかい!」。テニスコート6面が入る「WingPark1st」が中村の専用パークだ。所属するウイングアーク1stの担当者は「京都の中心部は外観の条例がある。白くて大きなものを造れなかった」。縦43メートル、横29メートル、高さは12・7メートル。以前の中村は他県の施設に数時間かけて通っていたが、現在は自宅から1時間足らずで到着する。新型コロナウイルスの影響が顕著だった昨春も「1人で黙々と乗っていました」。20年1月のオープン時に想定していなかったコロナ禍で、練習を積める環境は強みになった。
■ナゾ(2)総工費4億円
続いて気になる内観。右を見ても、左を見ても「クオーター」と呼ばれるジャンプ台が目に入る。どうやら、それだけではない。9台のカメラに15台のセンサー。スピード、ジャンプなどが数値化されるというのだ。現在は週5~6日、1日約5時間の練習。スタート台から下りながら勢いをつけ、スポンジプールと呼ばれるクッションに向けて大技に挑む。スタート台に戻ると、脇の画面に撮影した動画がスロー再生された。中村はかねて「海外に行かずに練習できる。最高のパーク」と口にしてきた。
■ナゾ(3)六本木から遠く
約4億円の総工費は東京・六本木が本社のウイングアーク1stが負担した。ソフトウエアとサービスを通じてデータ活用の支援事業を行うが、スポーツは畑違いだった。データをパフォーマンスに生かせないか-。同社と中村側の思いが合致し、18年6月に所属契約を締結。9月に「チーム輪夢」の食事会で専用パーク構想が生まれ、19年秋に着工した。担当者は「BMX業界が盛り上がることが、これの成果になる。東京五輪は通過点。その後も、中村選手のパフォーマンスを上げる支援をしていきたい」と青写真を描く。
昨年6月、五輪代表発表会見で中村は誓った。「BMXと聞いて『自転車のことかな?』とみんなが思い浮かべるぐらい、有名な競技にしたい。出るからには1番を目指し頑張りたい」。パークのスケールが壮大な夢に重なって見えた。
◆BMXフリースタイル・パーク
08年北京大会から実施されているスピードを争うBMXレーシングと異なり、技を競うフリースタイルの1種目。高難度のトリックを組み合わせた1分間のランを2回行い、ジャッジによる採点で上位を採用。東京五輪は男女各9人が出場。有明アーバンスポーツパークで、7月31日に決勝の滑走順を決めるシーディングを実施。決勝は8月1日。
◆中村輪夢(なかむら・りむ)2002年(平14)2月9日、京都府生まれ。輪夢はBMXショップ経営の父辰司さんが自転車のリムからつけた。国内外のジュニア大会で活躍し、17年の第1回世界選手権7位。19年はW杯広島大会で日本人初の準優勝、Xゲームは初出場で2位。W杯最終戦で初優勝して年間王者。環太平洋大の通信教育課程に在学中。170センチ、62キロ。
(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「東京五輪がやってくる」)











