東京五輪マスコット「ミライトワ」とパラリンピックマスコット「ソメイティ」も、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた。等身大マスコットは、イベントやテレビなどへの出演が激減。現在はコロナ対策などで活動も限られる上、大会中止や延期を望む声が多数を占める。大会盛り上げ役は厳しい状況下で、可能な活動方法を模索し続けている。

左から東京五輪マスコットのミライトワ、東京パラリンピックマスコットのソメイティ(C)Tokyo2020
左から東京五輪マスコットのミライトワ、東京パラリンピックマスコットのソメイティ(C)Tokyo2020

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■デジタル世界住人

昨年4月から1年間、ミライトワとソメイティのテレビ出演はたった1回だった。イベント出演もキャンセルが相次いだ。東京五輪・パラリンピック組織委員会のマスコット担当者は「等身大マスコットの出演依頼は、1カ月に1回あるかないかでした。しかも規模が小さく、寂しいイベントが多かったです。イベント数自体が減りましたし、スポンサー企業も、イベントができなくなったりしていました」と明かした。

ミライトワとソメイティは18年7月にデビュー。各自治体やスポンサー企業の主催イベントに招かれ、等身大マスコットが大会を盛り上げるため、PRで各地を飛び回っていた。ところが新型コロナウイルス感染拡大という予期せぬ事態が発生した。マスコット担当者は「コロナ前、週末はほぼ予定が埋まっていました。出演は月10回以上、多い時は30回という月もありました」と振り返る。ミライトワとソメイティはデジタル世界の住人で、特にミライトワは瞬間移動が特技という設定だ。1日にイベントが数回入っている時は、東京から北海道に「瞬間移動」でハシゴ出演。イベント出演は47都道府県すべて制覇した。

本格的な活動再開は、今年4月の五輪100日前イベント前後。公式インスタグラムは1年ぶりに更新した。担当者は積極的な情報発信を控えていた理由を「マスコットが明るく情報発信できる状況でもなかったので」と話す。

大会まであと50日となったが、今後もさまざまな理由から、活動に制限がかかる。延期決定後、簡素化の一環で、競技会場内でのマスコット出演は全てカットされた。担当者は「競技会場回りは出番がなくなったが、大会関連施設、例えば、パートナー企業ブースでの活動などは計画しています」という。

■活躍できる場模索

担当者によると、海外の選手や観客とマスコットが触れ合う場を用意し、それぞれのSNSを通じて記念写真が世界中に拡散されることを狙っていたという。海外からの観客受け入れ断念決定で、海外選手に狙いを絞りたくても、厳しい状況にある。「選手村にも多分入れないので。『マスコットさん、選手村にどうしても来てください』と言われたら出ていきますが『どうしても』というほど呼んでもらえる感じでもない。現状、コロナ対策はすごく厳しくなっている認識です」。マスコットのLINEスタンプ企画や感染の心配がないロボット型マスコットの活動も検討するなど、等身大マスコット以外の参加による盛り上げを懸命に模索している。

担当者は自治体など各方面に「マスコット出演はどうですか」と呼び掛けているが、コロナ対策に追われている状況もあって「なかなかマスコット出演にまで話が進まない状態です」と悩ましい気持ちを明かす。「いつ声が掛かってもいいように準備しています」とあきらめてはいない。【近藤由美子】

<等身大マスコット「ミライトワ」「ソメイティ」アラカルト>

▼男女の性別はない。

▼立ち位置が決まっている 向かって左側がミライトワ、右側がソメイティ。エンブレムの並び方に合わせたもの。

▼無口 相手の話し言葉は分かるがしゃべらない。

▼暑さが苦手 暑さ対策として稼働時間は30分に限定。扇風機が好き。休憩中はハンディ扇風機を持って涼む。クーラーも好き。

▼雨が苦手 顔が見えるようにと特注の透明フード付き雨ガッパと長靴を着用。

▼コロナ対策 ハイタッチや握手をやめた。マスク着用は検討も「見せ掛けにすぎない」としていない。

▼ギャラ 「いただいていませんが、交通費など発生経費だけいただいています」(担当者)。

19年3月、東京五輪500日前イベントの東京五輪マスコット・ミライトワ
19年3月、東京五輪500日前イベントの東京五輪マスコット・ミライトワ

◆ミライトワ 五輪マスコットは、頭部と胴体は大会エンブレムと同じ市松模様。温故知新をコンセプトに、伝統を重んじながら最先端の情報にも精通する。正義感が強く、運動神経も抜群。特技は瞬間移動。

東京パラリンピックマスコット・ソメイティ(2018年7月22日撮影)
東京パラリンピックマスコット・ソメイティ(2018年7月22日撮影)

◆ソメイティ 桜の触角を持つクールなキャラクター。市松模様のマントで空を飛び、桜の触角でテレパシーを送受信。誰よりもパワフルで、超人的パワーを発揮するパラリンピックアスリートを体現する。

(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「東京五輪がやってくる」)